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認知症や知的障害者らの生活を支える「市民後見人」の活用進まず…要因は?

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 認知症の人などの金銭管理や見守りを担う成年後見制度では、自治体の研修を受けた住民が市民後見人として活動する。単身高齢者の増加に備え、担い手を確保しようと始まったが、親族や弁護士らに比べ、家庭裁判所に選ばれる人数はわずかだ。意欲のある人が後見業務に携われるよう、自治体は支援に力を入れる必要がある。(小沼聖実)

選任への信頼

成年後見制度 「市民後見人」増やしたい…自治体の業務支援 不可欠

男性の自宅で、地域商品券の使い方を説明する市民後見人の小野さん(左)(横須賀市で)

 「これ、来月の生活費ね。お釣りが出ないから、上手に買い物してくださいね」。神奈川県横須賀市の市民後見人、小野洋一さん(68)は10月末、担当する男性(77)の自宅を訪れ、1万2500円分の地域商品券を手渡した。

 独り暮らしの男性は認知症で、金銭管理が難しい。そのため、親族の申し立てに基づき、家裁から市民後見人に選ばれた小野さんが男性の預金通帳を預かり、月に数度、生活費を手渡している。買った覚えのない商品が届いた時には、注文の取り消しを行う。

 訪問時は雑談をしながら、男性が安全に暮らせているかどうかを確認する。持病の薬を飲み忘れないよう、毎日のように電話もかける。

 市民後見人になるには、一定の知識を身につける必要がある。小野さんは定年退職後の2019年、「地元の役に立ちたい」と考え、市の主催する養成講座に参加した。消費者契約法や認知症などについて、約50時間の研修を受講後、20年から、この男性を担当し、市から活動経費として月数千円を受け取っている。

成年後見制度 「市民後見人」増やしたい…自治体の業務支援 不可欠

 横須賀市は07年から市民後見人の養成に取り組み、現在は、小野さんを含め26人が活動する。ただ、全国的にみると、市民後見人の活用は進んでいない。22年に新たに後見人になった人・法人計3万9564件のうち、市民後見人は271件(0・7%)。弁護士ら専門職や親族の方が、家裁から後見人に選ばれやすいことが要因の一つという。

 同市ではこの課題を克服するため、市民後見人の利用について丁寧な調整を行っている。社会福祉協議会、弁護士らと会議を行い、市民後見人がふさわしい案件かどうかを検討した上で、家裁に候補者を推薦する。

 相続など法的な課題のあるケースでは、まずは弁護士らが後見人となり、解決後に市民後見人に引き継ぐ。社協が市民後見人に助言することもある。市地域福祉課の清水洋平さんは、「当初は家裁から、なかなか選んでもらえなかったが、取り組みの積み重ねで、徐々に家裁の信頼を得られるようになってきた」と話す。

重責から「敬遠」

成年後見制度 「市民後見人」増やしたい…自治体の業務支援 不可欠

 市民後見人の活用が進まない要因のもう一つは、人の財産を預かるなどの責任の重さから、研修を受けても受任をためらう人がいることだ。厚生労働省の22年度調査では、市民後見人の候補者が1人以上いる自治体の5割が、「市民後見人が受任への不安を感じている」と回答した。

 そこで、埼玉県飯能市では、市社協が法人として後見人となり、養成研修の修了者を、市社協の非常勤職員として雇用することで、実際の業務に携わってもらう仕組みを整えている。

 修了者は社協の指示のもと、預金の引き出しや支払い、面談などの実務を担当する。社協は、通帳の保管や家裁への報告書の作成、夜間や休日など緊急時の対応を引き受ける。14年から従事する大野知子さん(73)は、「業務で迷った時も社協から助言を得られるので、安心して働ける」と話す。

 同志社大の永田祐教授(地域福祉論)は、市民後見人の良さについて、「後見される人と同じ地域に住んでいるので、どのように暮らしたいかなどについて、本人の気持ちに寄り添いやすい」と強調する。

 また、養成研修は、全国の自治体の4分の1ほどしか行っていない。これについて、「行政は養成しても選ばれないなどと諦めず、市民後見人の育成に力を入れてほしい」と指摘する。

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