藤原るか「ヘルパーは見た! 在宅介護ペット事件簿」
医療・健康・介護のコラム
【最終回】愛猫4匹と亡き妻の故郷へ…心臓発作で夢破れ 日本の現実に不安
「ちょっと相談がある」。要介護1、一人暮らしの安崎さん(70)からそう切り出されて、「どこかにお出かけですか?」と尋ねました。
安崎さんは写真が趣味で、折々に撮影旅行に出かけます。4度目の心臓手術を終えてやっと体調が安定してきた今日この頃、そろそろ紅葉の季節だし、留守中の飼い猫のお世話を頼まれる頃合いだと思っていたからです。
安崎さんのお宅の総勢4匹の猫ちゃんたちは、がんで亡くなった奥さまの“忘れ形見”です。4匹とも同じ母猫から生まれたきょうだいですが、性格はまちまち。人懐こいのはクロだけで、シロ、チビ、ブチは、私たちホームヘルパーが訪問時にフードを盛っても、姿を見せないことが多いのです。
10年ほど前、最初に飼ったメスの子猫がいつの間にか妊娠し、子どもを産んだのでびっくり。急いで避妊手術を受けさせたそうです。「当時は何も知らなかったから、慌てたよ。猫は8か月ぐらいで子どもが作れる体になるなんてなぁ」と、懐かしそうに話します。
憲法に「動物保護」
安崎さんの亡き奥さまはドイツ出身で、実はこの日の「相談」とは、奥さまのふるさと、ドイツに猫たちを連れて行きたいということだったのです。
私は、ヘルパー仲間とともにさまざまな国を訪れて、現地の介護職に仕事の実態を聞き取り調査する「世界のヘルパーさんと出会う旅」を企画しています。近くドイツを訪問する計画があり、何げなく安崎さんに話したのに触発されたようです。渡航準備のお手伝いと旅行中の付き添いを頼まれました。
旅の話だろうと予想していたものの、まさか海外、それも猫4匹を連れて行きたいなんて!
ドイツは、日本より先に介護保険ができた国として知られますが、日本と大きく異なっているのは、高齢者とともにペットも支援の対象となっていること。なにしろ、憲法に「動物保護」の規定がある国ですから、制度の根底にある考え方から違うのです。
そんな「ペット先進国」へ、介護が必要な高齢男性と猫たちと同行したら、きっと得がたい経験になるでしょう。考えただけでワクワクします。
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