リングドクター・富家孝の「死を想え」
医療・健康・介護のコラム
財津一郎、元大関朝潮、在宅死の願いはどうすれば、かなえられるのか?
このところの有名人の死で考えさせられることがあります。自宅で家族に見守られながら亡くなられているということです。
10月14日に慢性心不全で死去された財津一郎さん(享年89歳)の場合、本人は「入院はしたくない」と、訪問診療を選択していました。息子の功さんが「週刊文春」に語ったところによると、自宅の介護のベッドの上で眠るように亡くなっています。
「介護ベッドを自分で操作してリクライニングを起こしていました。元気だなと思って目を離した隙に逝っていたんです」
11月2日に小腸がんで亡くなられた元大関朝潮の長岡末弘さん(享年67歳)も、最期は自宅で夫人に見守られながら亡くなりました。その後、家族葬が行われています。
理想的な高島忠夫さんの死に方
有名人の在宅死で、私が理想的と思うのは、2019年6月に亡くなられた俳優の高島忠夫さん(享年88歳)です。死因は、老衰死と発表されました。当時の報道によると、亡くなられる1か月ほど前から家族は覚悟を決めていて、最期は眠るように息を引き取ったといいます。
晩年の高嶋さんは、うつ病になり、その後、パーキンソン病も発症。いったん復帰するも、2010年には不整脈から心臓にペースメーカーを取り付ける手術を受けていました。
この闘病生活を献身的に支えたのが、妻の寿美花代さんでした。入退院を繰り返すなか、寿美さんが自宅で介護をすることを決意、家族も協力して、在宅医とヘルパーを頼み、24時間体制で見守ってきたといいます。在宅医は週1回訪問診療をし、ヘルパーは1週間3交代で来宅してもらっていました。
7割が在宅死を希望しても現実は17%
がんの末期などで終末期に入ったとき、多くの人が「自宅で家族に見守られて最期の時を迎えたい」と思います。これが「在宅死」で、厚労省の調査では約7割の国民が望んでいます。しかし、その願いは残念ながらかなわないほうが多いのです。
2021年人口動態統計では、実際に自宅で亡くなる方の割合は17%であり、多くの方は病院で亡くなっています。また、厚生労働省は統計上、老人ホームなど施設での死も在宅死としています。
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