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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

子どもの目にピンセットが刺さった…なぜ、こんな恐ろしい事故が起こるのか

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金属棒が差し込まれた危険な遊具

事例2: 3歳女児。2010年7月19日午後3時半ごろ、自宅の2階の子ども部屋で4歳の姉、1歳の弟と遊んでいた。周囲に大人はおらず、母と祖父は3階にいた。ジャングルジム、すべり台、ブランコが一体となった室内用遊具で遊んでいた。ブランコを支える棒の両端に17センチくらいの金属製の棒が差し込まれていた。この棒は、高さを調整するために固定されておらず、子どもでも容易に引き抜ける状態であった。きょうだいで遊んでいたときに、子どもの右目に棒が刺さり、棒の先は眼窩から 頭蓋底(ずがいてい) を貫通して先端は後頭部まで達していた。

 なぜ、棒が頭に刺さったかのかはわかりません。子どもが転倒した拍子に、事例1と同じように、手に持っていた金属棒が目に突き刺さったと思われます。ケガをした後、棒を引き抜く手術が行われ、その後、けいれん、失語などが続きました。8月10日、この事故について消費者庁が公表し、事故の発生から25日後に製造会社によりリコールが行われました。

きわめてまれな事故

事例3: 2005年4月10日、1歳7か月男児が、千葉市動物公園の背もたれのないベンチから後方にあおむけに転落した。植え込みのツツジの枝が後頭部に刺さり、5月12日に死亡した。

 ベンチに座っていた子どもが、後方のツツジの植え込みに転落しました。ツツジの枝が、頭蓋骨の後頭骨にある大後頭孔という大きな穴を通して脳の中まで刺さってしまったのだと考えられます。きわめてまれな出来事だったと思います。

 頭部の刺傷事故は重大な結果を招きやすいのです。子どもが遊ぶところに、とがったものは置かない。大人ができる予防策はそれにつきると思います。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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