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鶴若麻理「看護師のノートから~倫理の扉をひらく」

医療・健康・介護のコラム

生命倫理をドラマ映像で考える 身体拘束はケアか? トリアージ、ゲノム編集にどう向き合う?

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 本コラムでは、様々な看護職から実践事例をヒアリングし、加工してご紹介し、看護実践の倫理について考えてきました。今回は、生命倫理や看護倫理を考える教材としての映像の果たす役割や意義について、今までの経験から考えてみたいと思います。

医学・看護学教育では座学以外に様々な教材

生命倫理をドラマ映像で考える 身体拘束はケアか? トリアージ、ゲノム編集にどう向き合う?

 医学や看護学教育において、生命倫理や看護倫理を学ぶ際、座学の講義はもとより、臨床での具体的なケースを伝えるために様々な教材が使われます。たとえばペーパー事例(文章で説明した事例)、模擬患者の活用、ノンフィクション映像、教材用に作られた映像などです。

 今まで私は、生命倫理を考える映像教材の監修に医学・看護専門家と共に関わってきました。シリーズ1は2013年で、シリーズ2は2018年、もっとも新しい2023年のシリーズでは、「介護ロボット」、「アドバンスケアプランニング(ACP)」、「トリアージ」、「ゲノム編集」、「 AYAアヤ 世代のがん医療」(終わりのない 生命いのち の物語3 五つのケースで考える生命倫理、丸善出版)を取り上げました。

 例えば、「人生会議」として広まってきたアドバンスケアプランニングですが、私たち一人一人の自発的なプランニングは果たして可能なのか? COVID-19流行の経験からトリアージが世界でも大きな課題になりました。新たなパンデミックが生じた時、私たちはどうそれに向き合っていくのかなど、シリーズ1の発売から10年の時を経て、医療技術の進展や社会状況とともに取り上げる内容も変化しています。

映像は圧倒的な臨場感で心の機微まで表現

 映像の良さは、文章による表現とは異なり、圧倒的な臨場感とその場の緊迫感、そして非言語的な要素を通して心の機微も読み取れることです。表情、顔色、しぐさ、立ち振る舞い、服装など、すべてが物語を理解するための材料となります。

 ペーパー事例の場合は、どうしても一人の人物に焦点をあてた形で描かれることになりますが、映像の場合は、複数の登場人物にかかわる情報や状況が一気に伝わり、視聴者の想像力をかきたてます。たとえば、入院中の患者の自宅での生活、医療従事者の病院以外での家庭生活などを、同時に描くことが可能です。

 このコラムでご紹介してきたどの事例も、実際はもっと複雑ですが、だれでも容易に理解しやすいようにある程度単純化しているところがあります。看護師が臨床でどう行動すべきかと悩み、葛藤するような倫理に関する事象は言葉で説明することが難しく、その核になる部分を議論する際に、映像にすることで理解しやすくなります。映像教材はこのような難しい問題を比較的容易に提示でき、学習内容の質を保つことができます。一方、作り方によっては思考の誘導が容易にできてしまうので、その点は十分に配慮しなければなりません。

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鶴若麻理(つるわか・まり)

 聖路加国際大学教授(生命倫理学・看護倫理学)、同公衆衛生大学院兼任教授。
 早稲田大人間科学部卒業、同大学院博士課程修了後、同大人間総合研究センター助手、聖路加国際大助教を経て、現職。生命倫理の分野から本人の意向を尊重した保健、医療の選択や決定を実現するための支援や仕組みについて、臨床の人々と協働しながら研究・教育に携わっている。2020年度、聖路加国際大学大学院生命倫理学・看護倫理学コース(修士・博士課程)を開講。編著書に「看護師の倫理調整力 専門看護師の実践に学ぶ」(日本看護協会出版会)、「臨床のジレンマ30事例を解決に導く 看護管理と倫理の考えかた」(学研メディカル秀潤社)、「ナラティヴでみる看護倫理」(南江堂)。映像教材「終わりのない生命の物語3:5つの物語で考える生命倫理」(丸善出版,2023)を監修。鶴若麻理・那須真弓編著「認知症ケアと日常倫理:実践事例と当事者の声に学ぶ」(日本看護協会出版会,2023年)

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