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牛乳アレルギーの治療効果にビフィズス菌が関連

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 牛乳アレルギーは小児に高頻度で見られ、半数ほどは3~5歳で自然治癒するものの、遷延例では日常的に牛乳の誤飲・誤食リスクにさらされる。牛乳アレルギーの治療法として経口免疫療法(OIT)の有効性が示されているが、特に治療中に重篤なアレルギー反応のリスクが高く、治療終了後に免疫寛容を維持すること(持続的無反応の達成)が鶏卵、ピーナツなどのアレルギーに比べ困難である。理化学研究所生命医科学研究センター副センター長の大野博司氏、柴田涼平氏らは、腸内細菌叢と糞便中の水溶性代謝物を解析し、OITによる持続的無反応達成に関連する因子としてビフィズス菌などを同定し、Allergol Int( 2023年11月1日オンライン版 )に報告した。

小児32例を対象に二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を実施

牛乳アレルギーの治療効果にビフィズス菌が関連

(C)Adobe Stock ※画像はイメージです

 対象はIgE依存性牛乳アレルギーを有する5~15歳の小児32例。OITによる持続的無反応達成に関連する因子を明らかにするため、9施設で13カ月のOIT実施後に二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)を行い、持続的無反応例を抽出。OIT期間中、DBPCFC前後、1年後にそれぞれ臨床データ、血液、糞便検体を採取して分析し、持続的無反応に関連する臨床的因子および腸内環境因子を探索した。

 DBPCFCでは、13カ月のOITを完遂した28例を、牛乳を摂取する群(CM群)と香り付けした豆乳を摂取する群(対照群)にランダムに割り付けて実施。抗ヒスタミン薬または抗アレルギー薬の投与中止から48時間後にCM群は牛乳0.01mLを摂取し、その後20分ごとに0.03、0.1、0.3、1、3、10、30mLと増量。明らかなアレルギー反応なしに牛乳を30mLまで摂取(累積摂取量44.4mL)し、2週間無症状で経過した7例を持続的無反応達成とした。

牛乳アレルギーの持続的無反応と関連する因子を同定

 持続的無反応に関連する腸内環境因子を同定するため、糞便検体から変動パターンが類似している腸内細菌と水溶性代謝物をモジュールごとに解析した。

 解析の結果、腸内環境因子のうち、牛乳特異的IgEが持続的無反応達成率の低下と、ビフィズス菌優勢モジュールが達成率の上昇と関連することが示された〔牛乳特異的IgE:牛乳0.01mL増量ごとのオッズ比(OR)0.67、95%CI 0.41~0.93、P=0.046、カゼイン特異的IgE:同0.66、0.42~0.90、P=0.027、ビフィズス菌優勢モジュール:同1.40、1.10~2.03、P=0.024〕。また臨床的因子としてはアトピー性皮膚炎および喘息が持続的無反応達成率の低下と有意に関連していた(アトピー性皮膚炎:OR 0.09、95%CI 0.00~0.67、P<0.041、喘息:同0.16、0.02~0.87、P<0.034)。

 今回の結果について、大野氏らは「牛乳アレルギーの小児におけるOITによる腸内環境の変化および持続的無反応に関連する腸内環境因子が示された」と結論。「今後はOITが免疫寛容を誘導するメカニズムの解明や、OITにおける腸内細菌を標的とした併用療法の開発への貢献が期待できる」と展望している。(服部美咲)

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