わたしのビタミン
医療・健康・介護のコラム
11歳の次男は生まれた時から重症心身障害児…日常的な医療的ケアは朝6時から翌日午前2時まで
医療的ケア児と家族らの全国組織代表…宮副和歩さん(50)
代表を務める「全国医療的ケアライン」は昨春、医療的ケアを受ける子どもと家族、支援者をつなぐ組織として設立されました。会員数は約3600人で、都道府県ごとに家族会があります。重い病気や障害があろうとも、子どもたちが住み慣れた地域で尊厳のある暮らしを送れる社会の実現を目指し、活動しています。
11歳の次男は、生まれた時からの重症心身障害児です。2歳の時、かぜをこじらせた末に重い気管の病気にかかり、気管切開の手術を受けて人工呼吸器を使うようになりました。おなかにつけた胃ろうから水分と栄養をとり、のどに開けた穴からたんを吸引するなど医療的ケアを受けています。
「神様から豊かな心をいただけたら」という願いを込めて「 心資 」と名付けました。小さい頃から、とても表情豊かに笑う子です。
今は特別支援学校に通っていますが、日常的な医療的ケアは、朝6時から翌日の午前2時まで必要です。たん吸引などは、慣れると時間はかかりません。でも、容体を見極めるため、見守り続けなければならないのです。床ずれしないように、定期的に体の向きも変えてあげています。
我が家は私たち2人のほか、54歳の夫と13歳の長男の4人家族です。自宅で世話を続けていましたが、次男には地域で同世代の友だちと過ごせる場がありませんでした。
「本当にこれでよいのだろうか?」。考えた末に地元の東京都板橋区で2017年に交流の場として「親の会」を設立しました。使える行政サービスを教え合い、心配事を相談し合っています。経験を伝えることで、「若い夫婦の負担を少しでも軽くできれば」と思っています。
各地の家族会を束ねる形で全国組織ができた際に、中央省庁と物理的に距離が近い東京在住の私が、代表になりました。「支え合う」という点で地元と活動に違いはありません。
各地を見渡すと、家族に代わって自宅や施設で医療的ケアを行うサービスの提供体制や、学校で対応する看護師の確保の状況、災害時の避難所のあり方など、自治体間で格差があると痛感しています。
また、それぞれの家庭が課題を抱えています。我が家も、次男は学校を卒業すると進路問題に直面しますし、私たち夫婦は高齢の親も介護しています。
そこで、メンバー同士がオンライン会議で話し、知識や経験に基づくノウハウを共有しています。議論が盛り上がって深夜に及ぶ時もあります。
医療的ケア児は、特別な存在ではありません。厚生労働省によると推計約2万人います。視力の低い人が眼鏡を使うように、ケアは日常を元気に過ごすための選択肢だと考えています。
3日には活動報告を兼ねた全国フォーラムを東京で開きました。今後も、より多くの人々に存在を知ってもらい、理解が広がる取り組みを続けていきます。(聞き手・高田真之)
みやぞえ・かずほ 1973年8月、高知県生まれ。結婚後、都内の国立病院で非常勤の医療ソーシャルワーカーとして働きつつ、上智大大学院で社会福祉学を学び、2012年3月修了。同年10月に重症心身障害児の次男を出産。22年3月から現職。
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