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第5回ヘルスケアベンチャー大賞 「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」に

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第5回ヘルスケアベンチャー大賞 「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」に

 アンチエイジング(抗加齢)の優れたビジネスプランやアイデアを表彰する「第5回ヘルスケアベンチャー大賞」(日本抗加齢協会主催、日本抗加齢医学会共催、読売新聞社、厚生労働省、経済産業省、日本医師会、三井不動産、LINK-J後援)の最終審査会と表彰式が10月27日に開かれた。東京都中央区の会場とオンライン視聴を合わせて、全国の医療、製薬、ヘルスケア分野の関係者ら235人が参加した。

第5回ヘルスケアベンチャー大賞 「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」に

「第5回ヘルスケアベンチャー大賞」で記念撮影する受賞者と審査員ら(10月27日、東京都中央区の日本橋ライフサイエンスハブにて)

大賞は株式会社アイ・ブレインサイエンス(髙村健太郎 代表取締役社長)

 34件の応募の中から、大賞には、株式会社アイ・ブレインサイエンス(本社・大阪府吹田市)の「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」が選ばれた。

 同社は2019年11月に設立された。大阪大学の研究プロジェクト「視線検出技術を利用した簡易認知機能スクリーニングシステムの開発による社会システムの負荷軽減」(研究代表者:武田朱公・大阪大准教授)が、科学技術振興機構の大学発新産業創出プログラム(START)に採択されたことがきっかけだった。認知症の早期発見と、医師の問診で患者が感じるストレスの改善を目指し、「アイトラッキング式認知機能評価法」を用いた医療機器の開発を進めている。

 「アイトラッキング」とは、視線の動きを機械が追跡して読み取る技術のことで、これを活用して認知機能を評価する。汎用のタブレットを使って、患者に3分間、画面を見てもらい、画面上の簡単な指示に従って動く視線を追う。それで、記憶力や判断力、注意力、空間認識などを確認できる仕組みだ。指示に沿った正解を選ぶかどうかだけでなく、選び出すのにかかる時間なども組み合わせることで認知症の診断が可能になるという。専門の医療スタッフを必要とせず、患者側も視線を動かすだけなので心理的なストレスが少ない。

 この技術を活用した医療機器プログラム「ミレボ」については、既に大塚製薬と販売契約を締結しており、認知症スクリーニング検査としての薬事承認取得・発売を目指している。アイ・ブレインサイエンス社は、認知機能評価の裾野を広げ、幅広い医療機関で認知症の早期発見に役立てたいとして、国内だけでなく、高齢者人口が増加しているアジア圏での展開も目指すという。

第5回ヘルスケアベンチャー大賞 「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」に

アイ・ブレインサイエンス社が開発した「ミレボ」(左)について紹介する髙村氏

 大賞には賞金100万円が贈られる。

学会賞は株式会社AutoPhagyGO(石堂美和子 代表取締役社長)

 大賞に次ぐ「学会賞」には、株式会社AutoPhagyGO(本社・大阪府吹田市)の「健康寿命延伸を目指したオートファジー活性評価事業」が選ばれた。

 細胞の再生をつかさどる「オートファジー」という機能は、加齢とともに低下する。同社は、その機能を測定したり評価したりする技術の事業化や、オートファジーを活性化させる食品成分を探し出し、新たなサプリメントや食品の開発に努めている。

 登壇した石堂美和子氏は「オートファジー活性測定法が拡張していくことで、医薬品、機能性表示食品への新たな展開につながる。ヒト由来の力を最大化し、死ぬ瞬間まで自分らしく生活できることを目指したい」と発表した。

第5回ヘルスケアベンチャー大賞 「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」に

オートファジーの可能性を紹介する石堂氏(右)(ウェブ画面より)

チャレンジ賞3社、アイデア賞2案も決定

 学会賞に続く「ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞」は以下の3社が選ばれた。(五十音順)

エピクロノス株式会社 日本人に最適化されたエピゲノム年齢測定によるアンチエイジングの見える化
株式会社TrichoSeeds 男性型脱毛症治療のための毛髪の再生医療
株式会社プリメディカ 日本人腸内細菌叢データベースを活用した腸内環境評価システムの開発

 これらの企業のプランに加え、個人の優秀なアイデア2案も表彰された。

アイデア賞

市川寛氏(同志社大) 超音波照射による酸化ストレス耐性誘導を介した老化関連疾患予防法の開発
楠博氏(大阪歯科大) オーラルフレイルの新規診断法と治療薬の探索-医科からのアプローチ

(※詳細は、 第5回ヘルスケアベンチャー大賞「結果発表」のページ をご覧ください)

 審査委員長の堀江重郎・順天堂大学大学院教授は、「質・量ともに発展を感じている。大賞を受賞したアイ・ブレインサイエンス社は、ビジネスそのものが非常に成熟していると感じ、いろんな企業のお手本となっている。ヘルスケアベンチャー大賞からこのような会社が生まれてきたのは喜ばしいことだ」と総括した。

 山田秀和・日本抗加齢医学会理事長は「第1回大賞で学会賞を受賞した技術が進展し、今回の大賞に選ばれた。事業が本格的となったという意味で素晴らしい」と締めくくった。

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