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風疹 新型コロナ対策の緩和で再流行?…1962~78年度生まれの男性は抗体検査が無料

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 新型コロナウイルスの水際対策が緩和され、海外で流行する感染症のウイルスの持ち込みが懸念されています。風疹もその一つ。流行のたびに、目や耳、心臓に重い障害を持つ「先天性風疹症候群(CRS)」の赤ちゃんが生まれています。再流行を防ぐ対策を着実に進めることが求められます。(小山内裕貴)

妊婦の感染に注意

 風疹は、ウイルスを含むせきやくしゃみ、会話での 飛沫ひまつ を吸い込むなどして感染し、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどがみられます。多くは軽症で、無症状の人もいます。

 問題になるのは、妊婦の感染です。妊娠20週ぐらいまでにかかると、胎児にも感染し、CRSの赤ちゃんとして生まれてくるおそれがあります。CRSの3大症状は白内障や難聴、心臓病です。

 国立感染症研究所によると、流行は数年おきに繰り返されています。2013年は、全国で1万4344人が風疹にかかりました。同年を中心とした流行ではCRSの赤ちゃんが45人、18年からの流行では6人生まれたことが報告されています。

 コロナ禍前の生活に戻ってきた今、専門家は新たな流行を警戒します。神奈川県衛生研究所所長の多屋馨子さんは「マスクを外す人も増え、海外との往来も活発になっています。いつ感染が広がってもおかしくありません」と指摘します。

 流行を防ぐカギはワクチンです。

 現在、就学前に2回の定期接種が行われ、子どもの間で感染が広がることはほぼありません。直近2回の流行では、感染者の5~6割が30歳代~50歳代の男性でした。特に1962~78年度生まれの男性は、ワクチンの定期接種の対象外だったため、免疫を持つ人が少なく、感染を広げ、周囲の妊婦にうつしてしまうのです。

 国は、この世代の男性に特別な対策をとっています。希望者は、感染を防ぐ抗体の有無を調べる血液検査を無料で受けられます。抗体がないと判明した場合は、ワクチン接種も無料です。

企業健診も活用

 対策は2024年度末に終了する予定です。国は、流行を抑えるための数値目標を掲げています。検査は920万人、予防接種は190万人としましたが、今年6月末時点で検査は約449万人、ワクチン接種は約97万人にとどまります。

 対象世代は仕事が忙しく、検査や接種のために医療機関に行く余裕がない人も少なくありません。職場の健康対策に詳しい筑波大准教授(国際社会医学)の堀愛さんは「働き盛りの男性が検査を受けやすい環境づくりには、企業の協力が欠かせません」と話します。

 年間約90万人の労働者の健康診断を請け負う「全日本労働福祉協会」(東京)は19年、同意を得た企業の健診で、抗体検査ができる体制を整えました。これまで約1万4000人が検査を受けました。

 CRSの患者・家族会の共同代表、可児佳代さん(69)は、この取り組みを歓迎します。「CRSの子どもを一人でも減らすには、妊婦やその家族の力だけでは難しいことを知ってほしい。風疹の根絶は、社会全体で取り組む課題です」と話しています。

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