一病息災
闘病記
[安藤忠雄さん]2度のがん(1)プロボクサーから建築の道に…「体力には自信」告知に言葉失う
2009年8月、健康診断で「胆のうが腫れている」と指摘された。精密検査の結果、十二指腸乳頭部にがんがあることが分かった。十二指腸と胆管をつなぐ部分で、十二指腸と胆管、胆のうを摘出することになった。
その1か月ほど前、6歳上の指揮者、小澤征爾さんと食事をして、「我々は、頭は大したことはないが、体は元気だ」と笑い合ったばかりだった。
高校2年でプロボクサーとしてデビューするも、後の世界王者・ファイティング原田の練習風景を目の当たりにして自分の才能の限界を悟り、建築の道を選んだ。体力には自信があっただけに、突然のがん告知に言葉を失った。
自分の肩には、事務所のスタッフの生活がかかっている。気持ちを立て直し、すでに入っている仕事を調整して入院準備を進めた。「万一の事態」が起き、自分がいなくなった場合も念頭に、古参のスタッフと事務所の今後を話し合った。
9時間に及ぶ大手術は、無事に終わった。「焦りは禁物」と肝に銘じて、慎重に仕事を再開。少しずつ元の暮らしを取り戻していった。
「もう無罪放免かな」
手術から5年近くたち、そんな思いも抱くようになった14年6月、経過観察で通っていた病院から、急な呼び出しがあった。
「安藤さん、今度は前よりも大変です」。 膵臓 の真ん中にがんが見つかった。
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建築家 安藤忠雄 さん(82)
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