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医療・健康・介護のコラム

3回目の体外受精で妊娠したのに心拍を確認できず…流産手術を受けると医師も驚く状況が判明

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 不妊治療に臨む夫婦は「子どもが欲しい」と切実に願い、つらい治療に耐えています。しかし、妊娠・出産は常に危険と隣り合わせ。中には、治療によって自分の体に大きなダメージを受けてしまうこともあります。

3回目の体外受精で妊娠したのに心拍を確認できず…流産手術を受けると医師も驚く状況が判明

心拍を確認できる前に流産

 現在、49歳のYさんは、不妊治療を約10年間、続けた経験があります。

 結婚したのは27歳の時。夫も同じ年でした。「結婚したら次は出産と子育てだわ」と、勝手に思い込んでいて、子どもができなかったらどうなるのか、なんて考えたこともなかったそうです。

 結婚してから1年たっても妊娠せず、不安になって近所の病院で検査を受けました。しかし、これといった不妊の原因は見つかりませんでした。

 「自然に任せていたら妊娠できるだろう」。実際にそれから1年たった頃、自然妊娠しました。「うれしくって、うれしくって。まさに天にも昇る気持ちでした」。しかし、心拍を確認できる前に流産してしまいました。

 「ちょうど桜の季節で、泣きながら花びらが舞うのを見ました。花に命のはかなさを重ねて、仕方がないんだと自分に言い聞かせたのを覚えています」。本当につらい出来事でしたが、夫婦で乗り越え、次の妊娠を心待ちにしながら妊活を続けていました。それから3年たっても、妊娠することはありませんでした。

「子どもをつくったら」の言葉に怒り

 その頃、久しぶりに会った知り合いの夫婦が、「妊娠したよ」と教えてくれました。2人の幸せそうな表情が引き金になったのか、急に悲しくなって、その場にいられなくなってしまいました。その後に行くはずだったライブの予定を自分だけキャンセルし、泣きながら夜道を帰りました。

 また、夫の友人の家でバーベキューをしている時、その友人の男性に「子どもはいいよ。つくったら」と軽い感じで言われて、傷ついたこともありました。私がこんなに悩んでいるのに、よくそんなことが言えたものだと怒りすら覚えました。いま考えれば、その人は私たちが不妊で悩んでいることを知らず、何の悪気もなかったと思います。それは分かってはいるけれど……。その時はイライラが収まらず、夫に愚痴を聞いてもらいながら、そんなことに怒っている自分にも嫌気がさしました。

心が治療についていかない

 「妊娠」「出産」という、周りの人がいとも簡単に手に入れている未来に、自分たちは手が届かない――。Yさんは、その事実をどうしても受け入れることができずにいたのです。

 結婚から約5年がたち、Yさんは不妊専門のクリニックに通うようになりました。「クリニックはとても混んでいて、こんなにもたくさんの人が不妊で悩んでいるのだと驚きました」

 2人に不妊となる原因は見つからないのに、タイミング法や人工授精をしても妊娠しません。1年たって医師から体外受精を勧められました。

 「私は心の奥底では体外受精を否定していたのだと思います。自然に逆らう気がしたし、そこまでして子どもを望んでいいのだろうかというためらいがありました。でも、夫には私のような抵抗感はなかったこともあり、やるしかないと意を決して始めることにしました」

 腕やお尻に何回も注射を打つのが嫌でした。中でも「採卵」は最も恐怖と抵抗を感じました。「子どもをつくることは喜びであるはずなのに、『なぜ手術室で?』『なぜ麻酔で意識を失ったまま?』と、納得できずにいました。そんな私のためらいなど関係なく、治療はどんどん進んでいく……。今思えば、私の心は治療についていけず、置いてきぼりになってしまっていたと思います」

 それほどまでの苦労を経て頑張った最初の体外受精。それでも妊娠できなかった時、夫との言い争いがきっかけで泣き叫んで家を飛び出してしまいました。近所の畑でうずくまり、しばらく涙を止めることができませんでした。「自分は頭がおかしくなったのかとさえ思いました。こんなふうに感情をコントロールできなくなったのは生まれて初めてでした」

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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