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後閑愛実&ゆき味「病棟ものがたり」

医療・健康・介護のコラム

入院時に会話もできなかった80代男性が2か月後に多弁に…元気になったのは薬を減らしたから?

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飲んでいた薬は10種類以上 食事中に喉を詰まらせた80代男性が生還後、少しだけでも一人で食べられるようになった理由

 高齢者になると、いろいろな病気を抱えるようになり、服用する薬が増えていきます。しかし、そうした状況が続くと、本来、病状を改善させるための薬が、健康に害を及ぼしてしまうという場合があります。

▶【漫画】意識レベルが低く誤嚥した患者 

食事中に動かなくなる

 療養病棟に入院してきた80代の男性は、心臓病や腎不全に加え、不眠などもあり、複数の医療機関から10種類以上の薬を処方されていました。

 入院時の意識レベルは低く、声をかけると目は開けますが、すぐに閉じてしまいます。話しかけても簡単な単語が返ってくる程度。こちらが言っていることはわかっているようですが、会話にはなりません。

 ある日、介護職員が食事の介助をしていると、男性が動かなくなりました。

 「看護師さん、なんかおかしいです」

 介護職員に言われて患者さんをみると、顔色が真っ青でうなだれています。

 もしかして窒息!?

 そう思った私は、男性が座っていた車椅子の後ろにまわり、腹部突き上げ法(ハイムリック法)を試しました。しかし、全く反応がありません。

 そのまま隣の部屋に連れて行ってストレッチャーに乗せ替え、介護職員には胸骨圧迫(心臓マッサージ)をお願いし、私は吸引をして口の中のものを取り出そうとしました。すると、口の中から食べたものがたくさん出てきました。医師を呼び、気管挿管をしてもらうと呼吸が再開しました。

無口だった男性が軽い冗談も

 急性期病棟で治療をして2か月後、男性は療養病棟に戻ってきました。

 「いやー、あのときは死ぬかと思ったよー」

 以前入院していた時は無口だったのに、軽い冗談を言うほど、よくしゃべるようになっていました。

 急性期病棟では薬を減らし、5種類程度になっていました。窒息した時はおそらく、服用していた何種類もの薬の副作用によって意識レベルが低下し、のみ込む機能が落ちていたのです。薬を減らしたことで、以前よりも回復されていました。途中からは、介助は必要でしたが、食事も少しは自分で取れるようになりました。

薬の副作用で嚥下機能が

  誤嚥(ごえん) は、高齢者の不慮の事故死の多くを占めています。年を重ねるうちに食べ物をのみ込む力(嚥下機能)が低下し、気道に入り込んでしまった物を、せき込んで吐き出す力も弱くなり、食べ物が詰まりやすくなります。ただ、その中には、薬の副作用が重なって嚥下機能が低下したというケースが含まれています。

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byoutoumonogatari_prof

後閑愛実&ゆき味「病棟ものがたり」
後閑愛実(ごかん・めぐみ)

原案・執筆 後閑 愛実(ごかん・めぐみ)
看護師
 群馬パース看護短期大学卒業後、2003年より看護師として病院に勤務。1000人以上の患者と関わる中で、様々な患者を看取(みと)る。看取ってきた患者から学んだことを生かし、看護師をしながら、13年から看取りの際のコミュニケーション方法について、研修や講演を通して伝えている。著書に「後悔しない死の迎え方」(ダイヤモンド社)。「終活!送る人、送られる人もホッと満足できる本」(明日香出版社)がある。

ゆき味(ゆきみ)

作画 ゆき味(ゆきみ)
マルチクリエーター
 2017年、多摩美術大学卒業後、フリーの作家として、立体造形・映像作品・グラフィックデザイン・漫画制作を中心に活動。漫画やイラストの制作、MV制作、オリジナルキャラクターグッズ、広告やパッケージのデザインなど、幅広い制作を手がける。「まんがでわかるはじめての看取りケア」作画担当。NPO法人さかうえのプロモーション動画「加部安の時計~天明の祈り~」制作、編集担当。19年、YouTubeに「ゆき味アートチャンネル」を開設。

過去コラムはこちら

後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」

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