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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

回転式遊具で小学1年生が指を切断…6時間後にまた同じ事故

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 公園の遊具が壊れていて、子どもがケガをすることがあります。行政など公園の管理者は、定期的な安全点検を行う必要があります。住民も、遊具が壊れていることに気がついたら、子どもがケガをする前に積極的に通報しましょう。

回転式遊具で小学1年生が指を切断…6時間後にまた同じ事故

イラスト:高橋まや

すぐに対策取らないと…

事例1: 2004年4月2日午前10時50分ごろ、大阪府高槻市の団地内の公園に設置されていた円盤型の回転式遊具に乗って遊んでいた小学1年生の男児が、遊具に右手の人さし指を挟まれ、爪先の部分が切断された。さらに同日の午後4時半ごろ、小学5年生の女児が同じ遊具に右手の人さし指を挟まれて切断された。

 遊具は、鉄製円盤(直径約1.8メートル)の上に座席が四つあり、子どもらが座って、中心部のハンドルを回転させて遊ぶが、ハンドルと支柱を固定していたボルトが抜け落ちて穴が開いていた。2人とも、この穴に右手の人さし指を突っ込んで、支柱とのあいだに挟まれた。公園を管理する大阪府住宅供給公社と大阪府は、府内の団地の全遊具の点検を行い、ボルトのゆるみなどがあった150基を使用禁止にした。

 6時間後に、まったく同じ事故が起こってしまいました。対策を取らないと、同じ事故が起こるという典型例です。この事故からでも、遊具の安全点検が重要なことはわかります。では、安全点検は十分に行われているのでしょうか。

修理・撤去等が必要な遊具が18.5%

 都市公園(国、地方公共団体の公園)については、安全点検の実施状況が国土交通省によって発表されています。それによると、2019年度末時点で全国の都市公園は11万1349か所、設置されている遊具は39万2072基でした。日常点検は平均で月に2.9回、定期点検は平均で年に1.5回でした。設置から20年以上経過している遊具等は49.7%、修理・撤去等の安全確保措置が必要であったものは18.5%でした。

 点検はそれなりに行われていますが、古い遊具が半分を占め、中には危険な遊具も少なくないことがわかります。

公園の遊具が使用禁止に

 実際、公園の遊具の使用が禁止されるというニュースもよくあります。最近の例をみてみましょう。

事例2 広島県福山市では、市が管理する公園遊具のうち約200基が2023年1月から使用禁止になっている。 安全確認を進めた結果、事故に結びつく可能性のある遊具が確認されたためで、市では撤去を進める方針。

 なぜ、このような状況になったのかを調べてみますと、2019年3月に総務省中国四国管区行政評価局から「 都市公園における遊具の安全確保に関する行政評価・監視 」という通知があったためです。福山市を含む中国地方の5自治体が「遊具の構造等に起因するハザード(危険性)を把握していない」と指摘され、市が点検を行ったところ、安全基準を満たしていない遊具が多数見つかったのです。

 中国地方の5県では、十数年のあいだに都市公園は21%増加し、遊具数は6%増加しました。その間、遊具による事故は減っておらず、毎年発生しているため、2018年度にこの調査が行われたのです。その結果、遊具の配置、設計、構造、施工について事故につながる危険性があること、不十分な維持管理で使用不可とされているのに使用されているものがあること、修繕の記録や保存が不十分であること、報告や再発防止策が不十分であることなどが指摘されています。この通知の中の写真を見ると、誰が見ても危ない遊具と思うものばかりです。

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yamanaka-tatsuhiro_prof

山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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