メディカルトリビューン
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認知症リスクを下げるのはイヌかネコか?
社会の高齢化に伴い増加し続けている認知症は高齢者の要介護認定や死亡の危険因子であり、認知機能低下の進展抑制因子の同定が待たれる。国立環境研究所の谷口優氏らは、健康に良い影響を及ぼすことが示唆されているペットの飼育に着目。ペットを飼育している高齢者の社会医学的特徴に基づく傾向スコアマッチング解析を行い、イヌやネコの飼育と認知症の関連などを検討。結果をPrev Med Rep( 2023;36:102465 )に報告した。ペット飼育と認知症発症との関連を示す研究は初めてという。
飼育率はイヌが8.6%、ネコが6.3%
今回の対象は、高齢者のフレイルと要介護認定を予防して健康寿命を延伸することを目的とした大田区元気シニア・プロジェクトの参加者のうち、ペットの飼育経験についての質問票に回答した1万1,194人(平均年齢74.2±5.4歳、女性51.5%)。
東京都大田区の住民基本台帳から2016年6月1日時点で要支援または要介護認定を受けていない65~84歳の区民を層化ランダム抽出(外国人を除き性・年齢階級65~74歳、75~84歳で層別化)。自記式質問票を郵送し、運動、栄養、社会参加などの状況に加え、ペット飼育経験の有無、飼育経験がある場合はペットの種類(イヌ、ネコ、その他)を尋ねた。
現在のイヌおよびネコの飼育状況は、イヌ飼育者が959人(8.6%、女性54.4%、65~74歳59.2%、75~84歳40.8%)、イヌ非飼育者が1万235人(91.4%、同51.2%、46.7%、53.3%)、ネコ飼育者が704人(6.3%、同52.1%、60.4%、39.6%)、ネコ非飼育者が1万490人(93.7%、同51.5%、47.0%、53.0%)で、124人が両方を飼育していた。
介護保険情報を用いて2020年までの認知症発症率を調査。ベースライン時の年齢、性、世帯人数、配偶者の有無、学歴、過去1年間の転倒歴、喫煙、運動習慣、近隣住民との交流、社会的孤立などの社会医学的特徴に基づき傾向スコアを算出し、逆確率重み付け回帰分析により認知症発症のオッズ比(OR)を算出した。
イヌ飼育者で認知症リスクが有意に低下、ネコ飼育者では有意差なし
約4年の追跡期間中に560人(5.0%)が認知症を発症した。解析の結果、イヌ非飼育者と比べてイヌ飼育者では認知症発症リスクが有意に低かった(5.1%vs.3.6%、OR 0.60、95%CI 0.37~0.97)。
一方、ネコ非飼育者と飼育者に有意差はなかった(5.0%vs.4.5%、OR 0.98、95%CI 0.62~1.55)。
追跡1年目の認知症発症例を除外した感度分析においては、有意ではないもののイヌ飼育者でリスク低下傾向が示された(OR 0.67、95%CI 0.40~1.14)。
イヌの世話に伴う運動や社会参加の維持による効用か
次に、イヌ飼育の有無別に運動習慣および社会的孤立と認知症発症との交互作用を検討した。その結果、イヌ飼育・運動習慣あり群、イヌ飼育・社会的孤立なし群で認知症発症のリスク低下が認められた(順にOR 0.37、95%CI 0.20~0.68、P=0.0001、同0.41、0.23~0.73、P=0.002)。
ただし、イヌ非飼育・運動習慣あり群およびイヌ非飼育・社会的孤立なし群でもリスク低下との有意な関連が示されたのに対し(順にP=0.003、P<0.001)、イヌ飼育・運動習慣なし群とイヌ飼育・社会的孤立あり群では関連がなかったことから(順にP=0.728、P=0.075)、谷口氏らは「イヌ飼育者では、日常的なイヌの世話に伴う運動や社会参加の維持が認知機能に保護的に働いていることが示唆される」と考察した。
これらの結果を踏まえ、同氏らは「地域在住高齢者を対象とした大規模縦断研究における傾向スコアマッチング解析の結果、イヌの飼育が認知症発症リスク低下に関連する可能性が示唆された」と結論。さらに「イヌの飼育はコロナ禍のような対人交流が制限される状況下においても、運動習慣や社会参加の維持に寄与することが期待できる」と付言している。(服部美咲)
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