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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

「就寝中、尿意で目が覚める」は大けがにつながることも 高齢者の転倒の3割が夜間の「トイレ歩行」

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。

 ご高齢の方にとって夜中の悩みの筆頭と言えばトイレが近いことです。ふと目を覚ますと何となく尿意を感じてトイレに行きたくなり、その歩行中に転倒してしまうことが多く、思わぬけがにつながることもあって、医療上の大きな問題となっています。今回は夜間覚醒時の転倒のリスクと対策について考えてみます。

夜中の歩行でけがをしないためには

「就寝中、尿意で目が覚める」は大けがにつながることも 高齢者の転倒の3割が夜間の「トイレ歩行」

 国立長寿医療研究センターが愛知県内の中高年の住民を対象に実施した調査によれば、60代以降に夜間頻尿が急増し、70代以降では女性の80%以上、男性の90%以上が夜間に尿意を感じて、少なくとも一度は「トイレ歩行」をしていることが明らかになっています。3回以上トイレに起きる方も女性では10%以上、男性は30%にも達します。

 トイレに行っても、さほど排尿量が多くないこともしばしばです。若い頃であれば「この程度の尿量で目を覚ますことはなかった」と嘆いている人も多いはず。これは年齢とともに眠りが浅くなっていることに加えて、高齢になるにつれて、少量の尿でも尿意を感じやすくなる特徴があり、夜中の目覚めにつながってしまうためです。しかも、「ここでトイレに行かなければまた目を覚ますのではないか」という不安から、起床してトイレまで歩くとしっかり目が覚めてしまいます。そのことがさらにその後の眠りを浅くするのです。

 さて冒頭でも書いたように、このトイレ歩行中に転倒する方が非常に多いことが医療安全上の問題となっています。65歳以上の高齢者の10~25%が1年間に少なくとも1回転倒し、10回に1回は骨折しているというデータもあります。転倒による骨折の医療費や介護費用は年間2兆円にも達すると試算されています。

 実は、転倒の約3割は就寝中のトイレ歩行時に生じています。「就寝時間は約8時間、1日の3割なのだから、転倒の3割が夜間に起こるのは当たり前だろう」と思われるかもしれません。しかし、就寝時間のほとんどを横になって過ごしていることを考えると、いかにトイレ歩行時に転倒が集中しているか理解できるでしょう。

 高齢者がトイレ歩行時に転倒しやすい理由は複雑です。まず、照明が暗い、部屋や廊下の段差でつまずくなど生活環境面の問題があります。また、筋力低下や歩行障害などがあると、よろめいたときに足の踏ん張りがきかず転倒してしまいます。トイレに向かう際には、室内や廊下をしっかりと点灯し、歩くときに壁に手を添えるなど体のバランスを保つ工夫が有効です。

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会理事、日本学術会議連携会員。著書に「不眠症治療のパラダイムシフト」(編著、医薬ジャーナル社)、「やってはいけない眠り方」(青春新書プレイブックス)、「8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識」(共著、日経BP社)などがある。

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