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重い1型糖尿病患者に「膵島移植」 膵臓移植との違いは?…保険診療で受けられるのは国内3施設

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 亡くなった人の 膵臓すいぞう から、インスリンを分泌する 膵島すいとう という細胞を移植する「膵島移植」が、重い1型糖尿病の患者向けに2020年から公的医療保険の対象になりました。血糖値を安定させ、命に関わる発作を減らせるため、新たな治療の選択肢になると期待されています。(余門知里)

体への負担少なく

 1型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンが体内でほとんど分泌されない病気です。外からインスリンを注入しないと、手足のしびれや失明といった合併症を引き起こします。推計患者数は国内に約10万~14万人です。

 膵島移植は、脳死を含む亡くなった臓器提供者(ドナー)の膵臓を使います。

 特殊な技術で膵臓から膵島だけを取り出しておきます。糖尿病患者のおなかに差し込んだ細い管を通じて肝臓の血管に膵島の細胞を点滴します。点滴にかかるのは15~20分です。

 おなかを大きく開く膵臓移植よりも体への負担や、感染症など合併症の恐れが少ない利点があります。

 1回の移植で生着する膵島は限られるため、移植は3回行えます。移植した膵島が機能すればインスリンが分泌されるようになり、血糖値の安定や低血糖発作の減少につながります。

 対象は、インスリンの分泌が著しく低下し、専門医でも血糖管理が難しい重い1型糖尿病患者です。原則、75歳以下で、発症から5年を超え、本人の同意があるという条件もあります。1型糖尿病患者のうち1割程度が対象になると想定されています。

 膵島移植は12年から、保険適用外ですが、入院費など一部で保険が使える「先進医療」として行われてきました。移植を受けた9人のうち、3人がインスリンの注入が不要になったことなどが評価され、保険適用されました。

 保険診療では計7人に移植が行われています。

 藤田医科大病院(愛知県豊明市)など全国3か所で保険診療を受けられます。

移植待機に100人

 移植を希望する人は、主治医を通じて日本膵・膵島移植学会の事務局に申請します。移植の適応と判定されれば待機リストに登録されます。現時点では約100人が登録されています。待機期間は3~4年です。

 移植後は、免疫抑制剤の服用が必要です。臓器移植と違って公費支援がないため、保険診療でも月数万円の負担が生じます。

 13歳の時に1型糖尿病と診断された兵庫県の女性(55)は、18~21年に計3回、膵島移植を受けました。年に10回程度起きていた発作がなくなり、血糖値も安定しました。女性は「血糖値を常に気にしていた生活から解放され、普通に近い生活が送れるようになりました」と喜んでいます。

 ただし、膵島移植は、移植後の免疫抑制剤の患者負担が高額なほか、患者や医師にあまり知られていないという課題があります。

 日本膵・膵島移植学会の理事長で、藤田医科大病院特命教授の剣持敬さんは「膵島移植は、体への負担が少なく、安全性も高い治療です。必要な患者がもっと受けやすくなるよう国に働きかけていきます。血糖の管理が難しい人は、まずは主治医に相談してください」と話しています。

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