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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

アントニオ猪木が逝って1年、リングに足を運ぶ度に思う、あのプロレスの世界は今はない

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ントニオ猪木が逝って1年、リングに足を運ぶ度に思う、あのプロレスの世界は今はない

 “燃える闘魂”アントニオ猪木さん(享年79歳)の 訃報ふほう に接したのは、2022年10月1日の早朝で、とうとうこの時が来たと思ったことが昨日のことのように思い出されます。リングドクターから見た猪木さんは、ずば抜けた回復力と天才的な受け身の人でした。いまでも私は、年に数回は一ファンとしてプロレスの試合を見ています。かつてよりも、エンターテインメント志向が強くなっているようです。それはそれで面白いのですが、猪木さんが亡くなって1年、格闘であるとともに人間的な生々しさもあった時代が懐かしく思い出されてなりません。

数万人に1人の難病に苦しんだ

 死の2週間ほど前、「腰が痛くてたまらないので、専門の先生を連れてきてくれませんか」と電話があり、専門医と訪問したのが最後の別れになりました。ベッドのリクライニングを上げ、つらそうな表情は少しも見せずに、彼は「いや、よく来てくれました」と言いました。

 猪木さんは、数万人に1人という難病「全身性トランスサイレチンアミロイドーシス」を患っていました。たんぱく質線維が心臓に沈着して、多臓器不全などを発症するという、いわゆる“不治の病”で、死を待つだけの状態でした。それでも、発症してから4年間頑張り抜いたのですから、頭が下がります。同時にどんな 強靭(きょうじん) な肉体を持ってしても、寿命には勝てないことを教えてくれました。

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。前新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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