文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

日本で生まれた子ども 24人に1人は父母のどちらかが外国人…外国人の出産・育児を支えるには?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 日本で暮らす外国人が増え、出産や保育での支援が重要になっている。文化や宗教、生活習慣などの違いによって課題に直面しやすいからだ。しかし、言葉の壁が原因で必要な情報が届きにくい。外国の女性や子どもに寄り添い、問題の解決に取り組む活動を2回にわたって紹介する。(粂文野)

文化、制度の違い 妊産婦に説明…6か国語に対応・1700件超の相談・日本語講座も

外国人の出産・育児を支える<上>先輩ママ 母国語で寄り添う

外国人妊産婦らが、病院などで使う日本語を学ぶ講座(東京都豊島区で)

 NPO法人「マザーズ・ツリー・ジャパン」は2020年6月、住民の10%が外国籍の東京都豊島区を拠点に、外国人の妊娠から子育てまでの支援を始めた。

 日本で子育ての経験のある外国人ボランティアら30人が、中国やタイなど6か国語で相談に応じ、通院や行政手続きに付き添っている。同じ国の「先輩ママ」が妊婦健診や産後の乳幼児健診で意思疎通を支え、子育ての悩みを聞く。

 インドネシア出身で帰化した芦村 夢樹ゆき さん(39)は今年9月、日本で2人目の赤ちゃんを出産した。帝王切開を選べるインドネシアと違い、通常、自然 分娩ぶんべん となる点や、麻酔で痛みを和らげる無痛分娩の可能な病院が少ない点に戸惑ったという。芦村さんは「心細い思いをしている人の力になりたい」として同団体でボランティアになった。

 これまで同団体は1700件を超す相談に応じた。日本語を話せないため、病院に受診を断られた妊婦と出産できる病院を探したり、在留資格や経済的な問題に対応したりもする。

外国人の出産・育児を支える<上>先輩ママ 母国語で寄り添う

 妊娠や子育てに関する講座も、外国人ボランティアの通訳で実施する。9月に開かれた講座では、4か国の妊婦ら約20人が参加し、「つわり」や「おしるし」など妊娠中の体調を伝える日本語を学んだ。

 12月に出産予定のミャンマー人、ミャッ・ピョー・ハンさん(34)は「病院でのやりとりが難しいので勉強になる」と喜ぶ。ミャンマー人の夫と一緒に講座に参加し、陣痛時に呼べるタクシーなどを教えてくれる仲間ができたという。

 坪野谷知美・事務局長(51)は「妊娠出産の心配は異国だとさらに大きい。相談相手がなく、産後うつになる人もいる。不安を減らし、孤立させない取り組みが必要だ」と語る。

国や地域、宗教尊重し情報提供

 「日本は湿気が多く、赤ちゃんの肌に湿疹ができやすい。だから毎日、お風呂に入れます」

 NPO法人「シェア=国際保健協力市民の会」が8月、ネパール人妊婦向けにオンラインで母親学級を開いた。同法人の助産師、松尾沙織さんが講師を務め、ネパール人が参加者6人に通訳した。

 ネパールでは赤ちゃんのケアにオイルマッサージを行う。一方、日本では毎日、「もく浴」させる。松尾さんはこうした習慣の違いも説明した。

 近年、留学や技能実習で日本を訪れるネパール人が増えた。大半の妊婦は夫に付き添って来日し、日本語が堪能でない。シェアは、母国語で出産や育児にかかわる情報を伝え、支援につなげようとしている。

 母親学級では、栄養士が食生活についても指導した。ネパールの食事は1日2回だが、軽食の習慣もある。揚げ物や砂糖をたっぷり入れたミルクティーなどを取るため、妊娠中に体重が増え過ぎる人も多いという。

 シェアは2021年度、東京都内の保健師らに外国人の妊産婦を支援する際の課題を聞き取った。その結果、言葉の壁によって生活状況を把握したり、情報を提供したりするのが難しいことが分かった。

 さらに「食習慣が分からず、食事を指導しにくい」「妊娠の早い段階で分娩の予約が必要なことを理解してもらえない」など、文化や制度の違いによる悩みもあった。松尾さんは「出産や育児は国や地域、宗教によって異なる。相手のバックグラウンドを尊重しながら、情報を伝えられる環境づくりが大切だ」と指摘する。

在日外国人は過去最多

外国人の出産・育児を支える<上>先輩ママ 母国語で寄り添う

ネパール人の妊婦向けに、助産師と通訳がオンラインで日本での出産や子育てを教える(東京都台東区で)

 出入国在留管理庁によると、日本で暮らす外国人は、昨年末で約307万人と過去最多。国や地域別に見ると、多い順に中国(約76万人)、ベトナム(約49万人)、韓国(約41万人)と続き、8割をアジアが占める。政府は外国人の受け入れ政策の見直しを進めており、今後も増えるとみられる。

 日本で出産する外国人も多い。国の人口動態統計では、2021年に日本で生まれた外国籍の子どもは1万8435人で、10年前の1.6倍。父母のどちらかが外国人の子を含めると3万4660人となり、国内で生まれた子どもの24人に1人にあたる。

 一方、技能実習生には「妊娠したら帰国してもらう」などと実習先に言われる人がいる。このため、実習生が妊娠を隠し、出産した子どもを遺棄する事件が起きている。こうした実習生に対する支援も重要だ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事