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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

雲ていに自転車用ヘルメットがひっかかって心肺停止…公園で遊ぶ時に気をつけるべきことは

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 前回は、公園や園庭の遊具による子どもの事故が多発していることをお話ししました。今回は、重傷度が高い事故について取り上げてみたいと思います。ケガをするパターンには、衝突、接触、落下、転倒、挟み込みなどがあります。その結果、打撲、裂傷、骨折などが起こります。

雲ていに自転車用ヘルメットがひっかかって心肺停止…公園で遊ぶ時に気をつけるべきことは

イラスト:高橋まや

死亡事故が起きた箱ブランコ

 重量があって、子どもが自分の力で動きをコントロールできない遊具は、接触した場合の衝撃が大きく、重大な事故につながります。

 箱ブランコでは、地面や、支柱とゴンドラ部のあいだに子どもの体が挟まれる事故が発生しています。「箱ブランコの外からブランコを押していた子どもが、ブランコを押したはずみに前のめりに倒れた。倒れたところに、箱ブランコが揺り戻しで戻ってきて、地面に倒れていた子どもの頭が挟み込まれて死亡した」などの事故で、これまでに20人以上の子どもたちが死亡しています。箱ブランコが最も下まで降りた時に、地面とのあいだに子どもの頭部の直径以上の空間が確保されていないと重傷事故につながります。

 遊動木では、遊んでいる最中、丸太と地面の距離はつねに変化します。下に落ちた子どもが丸太と地面のあいだに挟まれて事故が起こります。

 回転ジャングルジムでは、高速で回転させていたところ、子どもが手を離してしまい落下、あるいは回転を止めようとして手首が挟まれるなどの事故が起こっています。

 これらの遊具は禁止されているわけではありません。しかし、国交省のガイドライン「 都市公園における遊具の安全確保に関する指針 」では、「重量が大きい可動性の箱型ぶらんこや遊動木などの遊具は、接触した場合の衝撃が大きく、重大な事故につながるおそれがある」としており、撤去したほうがいいと思います。

重傷事故を予防するには

 遊具によるケガのすべてを予防することはできません。大切なことは重傷事故を防ぐことです。重傷になるのは、転落と、首などの挟み込みです。それぞれの事例と予防策を考えていきます。

〈1〉転落事故

事例1: 2008年7月、公園に設置された船の形をした複合遊具の丸太とチェーンからなるつり橋のすき間から3歳6か月の女児が転落し、 大腿(だいたい) 骨骨折、右前歯脱臼などを負った。落下した高さは3.5メートルで、衝突した地面は土であった。

 子どもが落下した高さと、落下地点の地表面の性状がケガの重傷度に大きく関与しており、衝撃をどれくらい吸収できるかがケガの程度に影響します。以下のような予防策が考えられます。

1)落下しないように、階段や踊り場に手すりか防護柵をつけ、ぬれやすい床はスリップ防止の措置をとる。

2)遊具の下の地表面を砂やウッドチップなどの衝撃吸収素材に置き換える。遊具の周囲を使用領域として定め、使用領域にも衝撃吸収素材を敷設する。

3)まだ運動能力の低い年齢の子どもたちが高いところに登れないように、足掛かりを作らないことも有効。特に命にかかわる頭部外傷の予防のために、この対策が必要。

 労働災害に関して、墜落・転落災害防止のための安全衛生規則で、高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等で作業を行わせる場合には、手すり、覆い等の設置を義務付けるなど細かく規定が決められていますので、遊具でも同じような基準を設定すべきだと思います。転落による重度の傷害、あるいは恒久的な障害を最小限にするため、幼児では2メートル、児童では3メートルまでの高さがすすめられています(日本公園施設業協会「遊具の安全に関する規準」)。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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