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[菅原洋一さん](下)18で旅立った孫の枕元で歌った「花は咲く」 自分が生きているのは「まだ修行が足りないから」

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 「知りたくないの」などのヒット曲で知られ、NHK紅白歌合戦に22回連続(1967~88年)で出場した歌手の菅原洋一さん。歌で自分を表現する喜びを知ったのは幼少期だったそうです。音楽大学に進み、歌手デビュー、そして人気歌手になるまでの多くの運命的な出会いなどを語っていただきました。(聞き手・藤田勝、撮影・小倉和徳)

幼少期、ラジオで覚えた流行歌を歌ってほめられた

[菅原洋一さん](下)18で旅立った孫の枕元で歌った「花は咲く」 自分が生きているのは「まだ修行が足りないから」

――兵庫県加古川市のご出身ですが、特に音楽に縁がある家ではなかったのですね。

 そうです。乾物から棺桶まで売る忙しい商家で、僕が店に行くといつも「邪魔だ」って言われていました。5歳ぐらいの時、ラジオで覚えた流行歌を店の人の休憩中にちょっと歌ったんです。そうしたらみんなが「ようちゃん、うまいね」と拍手してくれて、注目されたことがうれしかった。それからよく人前で歌うようになり、歌うことは自分を表現することだと、自然と感じるようになったのでしょうね。

――持って生まれた才能があったのですね。

 僕が生まれてすぐ、母親は亡くなっていますが、とても歌がうまかったと後に聞きました。だから、僕が歌うときは「お母ちゃんの代わりに歌っているよ」という気持ちも込められています。

――お母さんの記憶は全くないのですか。

 顔も知りません。後になって、写真をやっと1枚見つけたぐらいです。父はすぐ再婚して義母がいたので、実母のことはずっと伏せられていました。

実母は亡くなっていた ショックのうちに聞いたタンゴ

――大きくなってから知ったのですね。

 中学3年の時、親戚の人から「あんたのお母さんは亡くなったんだよ」と教えられてショックを受けました。それで頭の中が真っ白になったとき、アルゼンチンタンゴを聞きました。「 黄昏(たそがれ) 」というタイトルの悲しげな曲で、そのリズムが当時の自分の悲しい心境の鼓動のように響いて、それでタンゴが好きになりました。

――東京での大学時代はどのように過ごしていましたか。

 国立音楽大学っていう非常にのんびりした学校で、自分ものんびり過ごしていましたが、いつの間にか3年生になり、あと1年しかないとなって、あせって勉強し始めました。

 当時は歌手になれるとは思わず、卒業後は実家の商売を手伝いながら音楽の先生でもやろうかと考えていましたが、せっかくだから、好きなタンゴの勉強にもなるだろうと思って、イタリア語の歌、カンツォーネなどを勉強しました。その時の恩師がソプラノ歌手の関種子先生で、「あなたは軽音楽が向いているわ」と言って、(作曲家の)服部良一先生を紹介してくれたのです。

関先生、服部先生、なかにし礼さん…運命的な出会い

――それは大きな出会いでしたね。

 タンゴを勉強しながら、服部先生の内弟子のようになり、歌う機会をもらうようになりました。関先生、服部先生に出会い、そしてタンゴ歌手になり、当初はなかなか売れませんでしたが、(作詞家の)なかにし礼さんという人と知り合って、「知りたくないの」がヒットしました。人生には一つ一つの出会いがあり、今がある。そういうことですね。

――「知りたくないの」がヒットし始めたときはどんな気持ちでしたか。

 そのころ、ホテル高輪のラウンジで朝の3時まで歌っていました。それまであまり人が来ていなかったのに、あるときから急に人が集まるようになりました。最初、なんでこんなに人が来るのかわからなかったのですが、話を聞くと、「知りたくないの」が銀座の有線でヒットして、ホステスがお客さんを連れて来ているというのです。それで初めてヒットしていることを知りました。有線放送の最初のヒット曲でした。

――銀座にぴったりの曲だったのですね。

 「あなたの過去など知りたくないの」っていう、あのフレーズが銀座の女性たちの心に響いて、お客さんを引っ張って来てくれたのでしょうね。

――なかにし礼さんは、どんな存在でしたか。

 僕にとっては、なくてはならない人。向こうも「洋ちゃんと出会ってよかった」と言っていました。お互いに、出会うことによって自分の存在感を世に出せたと思います。

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