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発育性股関節形成不全 早期発見のポイントは?…国内で生まれる赤ちゃんの1000人に1~3人
乳幼児の股関節が外れたり外れやすくなったりする発育性股関節形成不全は、発見が遅れると治療が長引きがちです。日本小児整形外科学会は、治療可能な医療機関の一覧を公表し、発病が疑われる際の早期受診を呼びかけています。(草竹敦紀)
赤ちゃんの脚はM字
発育性股関節形成不全は、脚の付け根の関節が外れる脱臼を起こしたり、関節がぐらつき脱臼が起きやすくなったりする病気です。国内では生まれる赤ちゃんの1000人に1~3人で起こるとされます。
赤ちゃんの脚はM字に曲がった形をしているのが自然で、伸びた状態が続くと股関節の脱臼を起こしやすくなります。一度脱臼を起こすと、左右の脚の長さに差ができ歩きづらくなり、成人後も股関節が強く痛む恐れがあります。
医師はX線や超音波の検査の結果などを基に診断しますが、治療は開始時期により方法が異なります。
生まれて間もなく診断された場合は、赤ちゃんが脚をM字の形に保てるような抱っこのやり方を保護者に指導します。生後3か月以降ではバンドでできた装具を赤ちゃんの体や脚に着けて、M字の姿勢を保つ装具療法を行います。脚を適切な形に維持することで外れた股関節を元に戻せます。
生後6か月過ぎからは、ベッドで横になる赤ちゃんの脚を専用の器具で引っ張るけん引療法になります。固まった股関節を柔らかくする目的で、その後に脚をM字の形にする治療を行います。入院が必要で、改善しない場合は手術を検討します。
チェックリスト作成
国立成育医療研究センター整形外科診療部長の江口佳孝さんは「発見が早いほど治りやすく、治療の負担も少ない」と指摘します。
全国の自治体は乳児健診で小児科医らが股関節の状態を調べ、脱臼の疑いがある子どもに整形外科の受診を促しています。ただ同学会の調査で、2年間で1歳以降に199人が診断されたとの結果が出ました。
同学会などは保護者向けのチェックリストを作成。「赤ちゃんの股関節の開きが悪い」「『脚のしわが左右で非対称』『逆子で生まれた』など4項目のうち2項目を満たす」のどちらかの場合に整形外科受診の検討を呼びかけています。昨年は治療できる医療機関の一覧を同学会のサイト(http://www.jpoa.org/7793/#01)に掲載しました。
より確実に見つけようと、島根県江津市は3か月健診で保護者が同意した赤ちゃん全員に股関節の超音波検査をしています。小6の女児は12年前、この検査で脱臼が見つかり装具療法を受けました。小4の妹も生後間もなく同じ治療を受け、2人は今、不自由なく暮らしています。父親は「早くに見つけてもらえたおかげ」と喜んでいます。
同様の取り組みは長野県下諏訪町や新潟市などでも行われています。山根病院(島根県浜田市)の整形外科、星野弘太郎さんは「早期の対応により幼少期だけでなく大人になってからの生活の質を高められる。健診の場などでの活動が重要」と話しています。
家庭では、赤ちゃんを縦方向に抱く、おくるみを使う時に脚を包まないなど、脚をM字の形に保つことが大事だといいます。
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