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[AED](3)松田直樹さん急逝から12年 姉が思う弟の「生きた証し」とは…広がる「#命つなぐアクション」
サッカー日本代表だった松田直樹さんを知っていますか。J1の横浜F・マリノスなどで活躍し、2002年のワールドカップ日韓大会では、主力として初の16強入りに貢献した、日本屈指のディフェンダーです。松田さんは11年8月、練習中に急性心筋梗塞で倒れ、34歳で亡くなりました。練習場にはAED(自動体外式除細動器)がありませんでした。松田さんの死を無駄にしたくない――。そうした仲間たちの思いから、AEDの普及や心肺蘇生法を学ぶ活動が始まり、広がりを見せています。
リズムに合わせて
横浜市スポーツ医科学センターで8月、心肺蘇生法などを学ぶ講習会が開かれた。講師を務めたのは、救急救命士で日本体育大学保健医療学部准教授の鈴木健介さん。会場に集まった約50人の参加者は、間近にいる人が倒れた時の対処法や119番通報をした際に尋ねられることなどについて講義を受けた。その後、グループごとに、人形を使って胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAEDの使い方を練習した。
胸骨圧迫は、胸が5センチ程度沈む強さで、1分間に100~120回のペースで続ける必要がある。胸骨圧迫の練習を始めると、鈴木さんは「三百六十五歩のマーチ」など、このリズムと同じテンポの音楽を流し、体で覚えてもらえるようにした。参加者は皆、真剣なまなざしで、汗をかきながら繰り返し練習を行った。
講習会は、横浜F・マリノスが取り組む「#命つなぐアクション」の一環だ。マリノスは松田さんが16年間在籍したチーム。松田さんの悲劇を二度と繰り返すまいと、19年に「#命つなぐアクション」の活動を始めた。講習会のほか、ホームゲームがある日には、救急救命士の資格を持つ同大の教員や、資格取得を目指す学生らが、AEDを持ちながら会場を回っている。万が一、倒れた人が出た場合、迅速に対応できるようにするためだ。
8月の講習会には、かつて松田さんと同じピッチに立った波戸康広さんと田中隼磨さんも参加した。今はマリノスのアンバサダーを務める波戸さんは「マツとの思い出は鮮明に残っています。こうした講習やAEDの普及について我々が発信することで、マツが人の命をつなぎとめてくれるように思います」と話す。
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