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市販薬の過剰摂取、8割が女性…安易に始める若者多く「やめたいけど抜け出せない」

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中高生も深刻「支援頼って」

 若い女性の間で、市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)が深刻化している。厚生労働省の研究班が初めて調査したところ、過剰摂取後に救急搬送された人の平均年齢は25・8歳で、8割が女性だった。情報入手の手段はインターネットが最も多く、専門家は決して手を出さないように訴えている。(スタッブ・シンシア由美子)

「苦しい思い」

 千葉県市原市に住む女性(24)は昨年末、風邪薬を100錠近く飲んで救急車で運ばれた。

市販薬の過剰摂取、8割が女性…安易に始める若者多く「やめたいけど抜け出せない」

 その頃、当時の夫と離婚を巡りトラブルになっており、精神的に追い詰められていた。「もう死んでも構わない」。風邪薬の瓶のキャップをひねった。10錠、そしてまた10錠と手のひらに錠剤を載せ、ジュースで一気にのみ込んでいく。次第にろれつが回らなくなり、記憶が飛んだ。

 目が覚めると、そこは病院だった。胃を洗浄する治療を受け、激しい吐き気に襲われた。

 市販薬を大量に摂取するのは初めてではなかった。

 家庭環境や友人との関係に悩んでいた高校2年生の終わり頃、X(旧ツイッター)でこんな投稿を見つけた。

 <嫌なことを忘れられる><フワフワして気持ちよくなる>

 そんな情報を目にし、大量の錠剤をのみ込んだ。「つらい日常生活から逃避できるかも」と思い、その後も何回か同様の行為をしたことがある。

 女性は現在、精神科に通い、依存から脱却したいと強く願い、治療をしている。「あんなに苦しい思いはもうしたくない……。でも一度手を出すと、抜け出すことは難しい」と打ち明ける。

 さいたま市の湯浅静香さん(43)は、かつて自分自身が市販薬に依存していた体験を踏まえ、悩みを抱える若者や家族のサポートをしている。2021年夏から自宅に専用の一室を設け、月20件以上の相談が寄せられる。大半が中高生の子どもを持つ親からだ。

 世間の目や進路への影響を気にし、通院治療に踏み切るケースは少ないと感じている。「過剰摂取に走るのは『助けて』というサイン。家族で話し合って医療機関を受診したり、悩みを軽減したりする支援に頼ってほしい」と語る。

初の調査

 厚労省研究班によると、初の疫学調査は21年5月~22年12月、埼玉医科大など全国七つの医療機関で、市販薬を過剰摂取して救急搬送された計122人を対象に実施し、今年公表された。コロナ禍の20年頃からこうしたケースが増加傾向にあることを問題視したことが調査のきっかけという。

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 搬送者のうち59・8%が吐き気や 嘔吐おうと 、腹痛などの症状があり、44・3%に意識障害などの中枢神経症状が見られた。92・6%が入院し、56・6%が集中治療室で治療を受けた。

 性別は、男性25人、女性97人。年代別では、20歳代(50人)と、10歳代(43人)が全体の約8割を占めた。平均年齢は25・8歳で、最年少は12歳。市販薬に関する情報入手の手段は、インターネット検索が49件と最も多かった。

 研究班の代表で、埼玉医科大の上條吉人・臨床中毒センター長は「覚醒剤などの薬物と異なり、違法ではないことから、安易に始める若者が多い。コロナ禍でリアルな対人関係が薄れる中で、ネットを見ているうちにオーバードーズを知り、手を出した人が多いようだ」と話す。

国は対策を強化…市販薬販売制限 SNS投稿削除

 国立精神・神経医療研究センター(東京)が薬物依存で治療を受けた10歳代の患者が使用した主な薬物を調べたところ、2014年まで市販薬を使用するケースはなかったが、22年は65・2%に増えた。これとは別に、高校生の60人に1人がオーバードーズを体験しているとの試算もある。

 厚労省も対策を強化している。従来は、乱用の恐れが指摘される「コデイン」や「エフェドリン」など6成分を含む医薬品のうち、販売を制限していたのは一部だった。しかし、今年4月からは、6成分を含む全ての医薬品の販売を制限。購入できるのは原則1人1箱までで、中高生など若年者には名前や年齢を確認するよう販売者に求めた。

 さらにインスタグラムやTikTok(ティックトック)などのSNS運営事業者も、過剰摂取を促す投稿は、自殺や自傷行為を助長するとして、確認でき次第、削除している。

 しかし対策は不十分との指摘もある。国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦・薬物依存研究部長は「過剰摂取の背景には、本人の抱える生きづらさがある。悩みを解消するための総合的な施策が必要だ」と指摘する。

 政府は、悩みを抱える人の相談窓口として、こころの健康相談統一ダイヤル(0570・064・556)を開設している。

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