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宮本礼子・顕二「高齢者の終末期医療はよくなったのか」

医療・健康・介護のコラム

増え続ける高齢者の腎不全、どうする? 透析も腎移植もしない保存的腎臓療法も選択肢

心と体に負担を与える血液透析

 血液透析は、血液を血管から体の外に取り出し、透析器を介して老廃物や余分な水分を取り除いた後、再び体内に戻します。そのため、高齢者は透析中に血圧が下がってショック状態になり、心停止することがしばしばあります。

 また、認知症の人は、週3回、3~4時間、ベッドでじっとしていることが難しく、針を刺すときに暴れたり、針を自分で抜いたりすることがあります。そのため、鎮静薬が投与されたり、身体が縛られたりします。透析終了後は強い倦怠(けんたい)感から、ご飯も食べられなくなります。透析を負担に感じて、患者自身が透析を拒否することもあります。

 しかし、透析をしないと早晩死を迎えるため、透析は続けられ、最後は病院で死を迎えます。老化が進行した高齢者では、治療による利益よりも負担が上回ることが多く、「80歳以上で日常生活障害度が高度の場合、透析導入後の3か月以内に37%の人が死亡している」と2016年に報告されています。

 NHKスペシャル「人生100年時代を生きる 第2回 命の終わりと向き合うとき(2018年11月18日放送、NHKオンデマンドで視聴可)」は、慢性期透析病院で、透析のために生きている、生かされている高齢者の現状を伝えています。その病院では、70人の入院透析患者のうち、なんと90%が認知症でした。

 本来、血液透析は社会復帰を目指す治療ですが、患者の高齢化を背景に延命治療的な要素が強くなってきました。治療を続けることで人間としての尊厳を失うならば、主治医に相談して、腹膜透析や保存的腎臓療法へ変更してはどうでしょうか。

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宮本礼子・顕二「高齢者の終末期医療はよくなったのか」
宮本礼子(みやもと・れいこ)

宮本礼子(みやもと・れいこ)
江別すずらん病院・認知症疾患医療センター長。日本尊厳死協会北海道支部長。1979年、旭川医科大学卒。内科医。専門は認知症医療と高齢者終末期医療。2012年に「高齢者の終末期医療を考える会」を設立し、代表となる。著書「 欧米に寝たきり老人はいない(夫、顕二と共著)」(中央公論新社)、「 認知症を堂々と生きる(共著)」(同)。

宮本顕二(みやもと・けんじ)

宮本顕二(みやもと・けんじ)
北海道大学名誉教授、北海道中央労災病院名誉院長。
1976年、北海道大学医学部卒。内科医。専門は呼吸器内科と高齢者終末期医療。


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