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欧米の薬が日本で使えない「ドラッグロス」解消へ…厚労省、審査機関を米に開設へ
厚生労働省は2024年度中に、薬の承認審査を担う「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」の海外戦略を強化し、米国に拠点を開設する方針を固めた。現地の創薬ベンチャーに日本での開発を働きかけ、承認申請の相談などに無料で応じる。米食品医薬品局(FDA)とも緊密に連携し、欧米で承認された薬が日本で使えない「ドラッグロス」の解消を目指す。
PMDAは、厚労省所管の独立行政法人で、開設する米国事務所は、首都ワシントンが候補地に挙がっている。日本人職員に現地スタッフを加えて、数人置く予定だ。
米国事務所は、ベンチャーの経営者らが集まる商談会や学会に参加し、英語で情報発信する。日本の魅力として、承認までに必要な臨床試験や手続きに米国と共通点が多いことや、効果が高い薬を迅速に承認する制度が整備されていることなどをPRする。
日本でも薬の承認を得ることを希望する場合、安全性や有効性を確かめる治験の進め方などについて相談に応じる。日本から米国に職員を派遣したり、オンラインで対応したりする。
厚労省は24年度予算の概算要求に6600万円の関連予算を盛り込んだ。
厚労省などによると、近年、欧米で承認されていても日本では承認されていない薬は増えている。欧米で16~20年に承認されたものでは、がんや難病などの分野で86品目(今年3月時点)に上り、このうちベンチャーの製品が56%(48品目)を占めている。

厚労省
創薬ベンチャーは、米国や欧州での承認取得にとどまるケースが多い。日本は米中に次ぐ約10兆円の市場規模があるが、進出しない背景として、「言葉の壁」などが指摘されている。厚労省は、米国事務所を拠点に、国として現地企業との関係づくりを進め、日本での医薬品開発を積極的に促していく考えだ。承認申請に至るまで「伴走者」として支援する。
PMDAの海外拠点は24年度中にアジアにも開設することが検討されており、タイ・バンコクが想定されている。
◆医薬品医療機器総合機構(PMDA)= 厚生労働省から委託を受け、医薬品や医療機器、再生医療製品の承認審査などを担う機関。治験の内容や承認申請に関する助言も企業や大学・研究機関に行う。2004年に設立され、23年4月時点で職員数は1044人、うち審査部門は623人。
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