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認知症の蛭子能収さんが個展…筆致に変化 漫画から一転の新境地

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 3年前に認知症を公表した、漫画家でタレントの蛭子能収さん(75)の個展が、9月30日まで東京・南青山のギャラリーで開かれています。アクリル画を中心に、新作19点が並ぶ会場を訪ねました。(読売新聞メディア局 飯田祐子)

売れっ子だったが…

認知症の蛭子能収さんが個展…筆致に変化 漫画とは異なる新境地

自分の作品を見る蛭子能収さん(右)。根本敬さんが「この絵も売れたよ」と説明

 蛭子さんは20歳代前半に長崎県から上京し、26歳で漫画家デビュー。タレントや俳優としても活躍、ちょっととぼけた言動がお茶の間で愛され、年間200本近くの番組に出演していたこともあります。

 2020年6月、アルツハイマー型とレビ―小体型が合併した認知症と診断を受けました。それから半年余りの21年春、蛭子さんにインタビューする機会がありました。レビ―小体型認知症の症状である幻視のため、家のあちこちに炎が見えたり、かごの中の衣類を見て、奥さんが倒れていると勘違いしたり、認知症の症状とともに過ごす日々のことを語ってくれました。

 この取材の間、蛭子さんが繰り返し口にしていたのが、「働きたい」という言葉でした。当時は、コロナ禍もあってタレントとしての仕事は少なくなっていたものの、雑誌に連載を持ち、マネジャーや編集者と話し合いながら漫画のアイデアを出し、ペンを握っていたといいます。

「認知症の蛭子さん」だから描けた絵

 それから2年余り。蛭子さんの思いに反して仕事は途切れ、残っていた女性誌の連載も、今年6月に終了しました。このまま蛭子さんを世の中から消えさせてはならないと、古い付き合いの漫画家仲間や編集者などが集まり、個展を企画しました。

 今年の春から絵の制作を開始。監修を務めた漫画家の根本敬さん(65)とともにキャンバスに向かった蛭子さんが描いた絵は、自由な筆運びと大胆な色使いに目を奪われます。蛭子さんが自分でつけたというタイトルと合わせて見ると、味わいが増します。「ヘタウマ」ともいわれた、独特なタッチの漫画とは趣が異なりますが、会場で販売するポストカードのイラストを提供した漫画家のしりあがり寿さん(65)は、壁に並んだ作品を前に「蛭子さんらしさを感じる。面白い作品ができましたね」と評していました。

 根本さんは「幼児の絵のようにも見えて、75歳でないと描けない絵。認知症の蛭子さんだから生み出せた作品」といいます。

 作品は、1点ごとに30万~80万円の値がつけられ、すでにほとんどが売約済みでした。当の蛭子さんは、この人気に「すごいね。うれしいな」と、はにかんだような笑顔を見せていました。

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