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アルツハイマー病新薬「レカネマブ」承認…課題は価格、年100万円単位の可能性も
厚生労働省は25日、日本の製薬大手エーザイと米製薬企業バイオジェンが開発したアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)の製造販売を承認した。病気の原因とみられる物質を脳内から除去し、認知症の進行を抑える効果が初めて認められた薬だ。今後、薬価(薬の公定価格)の審議を経て、年内にも保険診療で使えるようになる見通しだ。

承認されたレカネマブ(商品名レケンビ)=エーザイ提供
レカネマブは、アルツハイマー病患者の脳内に蓄積する異常なたんぱく質「アミロイド β 」を取り除く。臨床試験で、認知症の進行スピードを緩やかにする効果が確認された。
脳の神経活動を活発にして一時的な症状改善を図る従来の認知症薬とは、作用の仕組みが根本的に異なる。低下した認知機能を改善させるものではなく、投与対象は早期アルツハイマー病患者に限られる。
エーザイは1月に承認申請。8月の専門家部会で「承認して差し支えない」と判断されたことを受け、厚労省が25日承認した。
今後は薬価について、厚労相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)で議論される。7月に承認された米国での販売価格は、患者1人当たり年2万6500ドル(約390万円)と高額だ。日本でも年間百万円単位の薬価になる可能性があるが、高額療養費制度があるため、患者の自己負担は、70歳以上の一般所得層(年収156万~約370万円)の場合、年14万4000円が上限となる。

レカネマブの正式承認を受けて取材に応じる内藤CEO(25日、東京都文京区のエーザイ本社で)
承認を受け、エーザイの内藤晴夫・最高経営責任者(CEO)は「アルツハイマー病治療の歴史に新たなページを開くことができた。必要とする患者と家族に的確に届けることに全力を尽くす」との談話を発表した。
◆ アルツハイマー病 =認知症全体の6~7割を占めるとされる。記憶障害などの症状が表れる10~20年前から脳内にアミロイドβが徐々に蓄積して神経細胞が傷つき、脳が萎縮(いしゅく)すると考えられている。世界保健機関(WHO)の推計では、世界の認知症患者数は約5500万人。
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