ニュース
医療・健康・介護のニュース・解説
糖尿病の新呼称案は英語の「ダイアベティス」…専門家「普及難しいのでは」
日本糖尿病協会などが、糖尿病への偏見をなくすため、糖尿病の英語表記である「ダイアベティス」という呼称を用いる案をまとめ、近く公表する。「尿」の字を含む病名に抵抗感を示す患者の声を踏まえた対応だが、医師ら専門家からは「分かりにくく、普及は難しいのではないか」との指摘が出ている。
糖尿病は、 膵臓 から分泌されるインスリンの働きが低下して、血糖値が慢性的に高まる病気だ。国内の患者と予備軍は、それぞれ1000万人と推定される。
糖尿病という病名は1907年、日本内科学会が定めた。当時は、尿に糖が出る病気とされていたが、今は患者の尿に糖が混じるとは限らないことが分かっている。尿の字から不潔なイメージを持たれることもある。
こうした背景から、医師や患者らで作る同協会は2019年、日本糖尿病学会と合同の委員会を設置。差別や偏見をなくす活動の一つとして、病名の見直しに向けた議論を進めてきた。同協会が22年に公表した調査結果では、病名に不快感や抵抗感があるとして、患者の8割が変更を希望した。
正式な病名の変更は、日本医学会や厚生労働省に報告し、行政文書の変更などを求める必要がある。これまでに、 痴呆 症が認知症になったり、精神分裂病が統合失調症になったりした例がある。
ただ今回の議論では、関係者の間で、定着した病名を変えることに慎重な意見も少なくなかった。
そこでまずは、外部への手続きが不要で、啓発活動などで使う呼称を設けることとし、「ダイアベティスが有力候補」とする案をまとめた。「糖代謝症候群」など別の候補を推す意見もあったが、学術的な正しさや国際的に受け入れられるとの理由で決めたという。
今後、具体的な使い方を話し合う。複数の関係者によると、「ダイアベティス(糖尿病)」など病名を併記する形で用いる案が出ている。患者や家族に対し、呼称案を決めた経緯を説明し、意見を求める場をつくることも検討する。
国立国語研究所で「『病院の言葉』を分かりやすくする提案」をまとめた田中牧郎・明治大教授(日本語学)の話 「英語を基にしたカタカナ表記にすれば誤解は防げる一方、覚えにくい上、言葉から病気の実態を連想しづらく、普及は難しいだろう。使う場合は、患者や一般の人の意見も聞きながら柔軟に見直す姿勢が必要ではないか」
【関連記事】