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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

がん教育を広めるためにはどうすればよいですか?

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がん教育を広めるためにはどうすればよいですか?

イラスト:さかいゆは

  前回のコラム でも書きましたが、小中高生への「がん教育」は、子どもたちにとっても、社会全体をよくするためにも、とても重要な取り組みです。

 国の政策として、「がん教育の推進」が掲げられ、一部の学校、一部の地域では、外部講師を活用した積極的な取り組みがなされていますが、まだまだ日本全体に広まっているとは言えない状況です。

 「学習指導要領にも記載され、やらなければいけないのはわかっているけど……」という、教育現場からのとまどいの声も聞こえてきます。

 今回は、がん教育を広めるためにはどうすればよいのかを考えてみたいと思います。

外部講師によるがん教育は8・4%のみ

 文部科学省が行った2021年度の「がん教育の実施状況調査」では、全国の国公私立の小学校、中学校、高校など約3万6000校から回答がありましたが、外部講師を活用したがん教育を実施したと回答したのは、8・4%のみでした。

 この数字には地域差もあり、都道府県別では、最も低い神奈川県(1・5%)から、最も高い佐賀県(28・3%)まで、幅がありました。

 外部講師を活用しなかった理由として、「教師が指導したため」を挙げた学校が59・1%ありました。つまり、教師によるがん教育はある程度行われているものの、外部講師の活用はできていないという学校が多いようです。

がん体験者と専門医の組み合わせは理想的

 学校の先生が、普段の授業でがんについて取り上げるのも、とても重要なことです。ただ、せっかくの機会ですので、子どもたちに、がんについてより正確に知ってもらい、自分のこととして考えるきっかけにしてもらえるように、外部講師をもっと活用した方がよいと私は考えています。がん体験者や医療従事者などの外部講師が、直接学校を訪れて、生の声で語りかけることで、患者さんの思いや、医療現場の雰囲気がよりリアルに伝わるはずです。

 2023年に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画には、「がんに対する正しい知識が身に付くよう、医療従事者やがん患者等の外部講師の積極的な活用について周知を行う」と記載されていて、国も、外部講師の活用を推進しています。

 それにもかかわらず、外部講師を活用できている学校は、わずか8・4%。まずは、この数字を増やしていく必要がありそうです。

 外部講師を務める医療従事者には、がん専門医のほか、学校医など非専門医の医師、薬剤師、看護師、保健師などが含まれます。外部講師を活用している学校のうち、がん専門医が外部講師を務めていたのは、19・3%でした。

 がん専門医以外の医療従事者も、それぞれの立場で、メッセージを伝えていますので、これからも外部講師として活躍していただきたいのですが、私としては、がん医療の現場をよく知る「がん専門医」がもっと活用されてもよいと思っています。

 なお、私が外部講師を務めたがん教育では、がん経験者と私がペアになって学校を訪れることもありました。がん経験者とがん専門医の組み合わせは、よりバランスよくメッセージが伝わり、理想的な形だと思っています。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)や、「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)がある。

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