わたしのビタミン
医療・健康・介護のコラム
所属モデルは50~100歳代 看護師だった28歳女性が熟年専門のタレント事務所をつくった理由
シニア専門のタレント事務所を運営する…平岡史衣さん(28)
年齢を重ねても、自分らしく輝いてほしい。そんな思いで、大阪市でシニア専門のタレント事務所を経営しています。設立から4年たち、今では50歳代から100歳代まで、200人以上が所属しています。「お金を稼ぎたい」というよりも、「おもしろい体験をしたい」というのが、応募の主な動機です。
事務所設立のきっかけは、大学を卒業後、看護師として京都市内の病院に勤めていた時の経験です。担当していた整形外科の病棟に骨折などで入院中の高齢者が、こう口にするのをよく聞いていたんです。「家に戻っても、楽しいことがない」と。胸が痛みました。
けがや病気が治っても、気持ちが弱ったままの状態では、本人の幸せにはつながらないのではないか。おじいちゃんやおばあちゃんに、何か生きがいを持ってもらえるお手伝いができないだろうか。色んな人と話しているうちにタレント事務所の設立を思いつき、2年勤めた病院を辞めました。
事務所に応募してくる人の背景は様々です。長年勤めた会社を退職した後、新しいことに挑戦したいという男性、夫や子どもの世話からようやく解放され、自由な時間ができたという女性――。劇団員や漫才師の経験がある人、占い師などもいますが、特別な才能のある人ばかりを求めているわけではありません。専業主婦を60年やってきたことも、誇れる経験だと考えています。
依頼される仕事は、健康食品や化粧品などのテレビコマーシャルへの出演、本の表紙のモデル、訪問介護事業所のホームページに載せる利用者役の写真など様々です。ミュージックビデオへの出演依頼もあります。芸能関係だけではなく、学校から「戦争体験を語ってほしい」と依頼されたこともあります。
高齢者が、仕事を通じて元気を取り戻していくのを見るのが喜びです。
80歳代の女性は、初期の認知症のような状態で家に閉じこもりがちでした。家族のすすめで、タレント活動を始めたのですが、現場で若い人たちと接するうちに、徐々に表情が明るくなりました。爪にネイルを施すなど、おしゃれにも気を使うようになったんです。
実は、事業を始めて間もなく、新型コロナウイルスの感染拡大が始まったことも影響して、仕事の依頼が思うように増えず、続けるかどうか悩みました。それでも、私のことを娘のように心配してくれるタレントさんたちのために頑張ってきました。
テレビ番組で活動が紹介されたこともあり、最近はようやく、仕事の依頼が増えてきました。所属タレントの人数に対し、まだ十分な仕事量とは言えませんが、これからも、「お年寄りが輝ける社会を作りたい」という思いを胸に、事業を続けていきたいです。(聞き手・板垣茂良)
ひらおか・ふみえ 1994年、京都府生まれ。2019年、「アンコールプロダクション」( https://encore100.com/ )を設立し、20年に株式会社にした。入会やタレントとしての登録は無料で、演技指導や宣伝用の写真の撮影は有料で行う。
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