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コレステロール蓄積が速い遺伝病、小学校健診で早期発見…家族の治療にも成果

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 生まれつきコレステロールがたまりやすい「家族性高コレステロール血症(FH)」を学校健診で早期発見する取り組みが注目を集めている。香川県は小学4年生に血液検査を行い、約5年間で両親など家族を含め、約300人で見つけた。患者は若い頃から動脈硬化が進み、心筋 梗塞こうそく などのリスクが高まる。早期発見・治療が重要で、全国で同様の取り組みが広がり始めている。

コレステロール蓄積が速い遺伝病、小学校健診で早期発見…家族の治療にも成果

 FHは、遺伝子の変異が原因で、新生児のときから血液中の悪玉コレステロールの値が高くなる遺伝性の病気だ。子どもに見つかれば、両親やきょうだいの早期発見にもつながる。

 国内の患者数は40万人以上とされる。コレステロールを蓄積するスピードが速く、心筋梗塞や狭心症を発症する割合は通常の10倍以上で、男性で主に30歳代、女性では50歳代からリスクが高まる。子どもの頃は血液検査の機会が少ないため、気づかないケースが多い。

 そこで香川県は2012年から、県内全域で小学4年生の学校健診で血液検査を実施。この病気の早期発見に役立つことが分かったため、18年から本格的に展開する。年間約8000人が対象で、コレステロールの値が高かった児童には、かかりつけ医の受診を促す。可能性が高いとされた場合、香川大病院など専門の医療機関で最終的に診断し、家族の受診も勧める。

 取り組みを主導する南野哲男・香川大医学部教授は「香川県の人口から推定すると、県内にいる患者の約1割を見つけられたと考えられる。極めて効果的な仕組みだ」と説明する。

 静岡県内では、掛川市や御前崎市など一部の自治体で16年から、小学4年生の学校健診を活用し、この病気の発見につなげている。疑いがある場合、中東遠総合医療センター(掛川市)を受診してもらう。今年7月からは、より正確に診断できる遺伝子検査も活用している。同センター小児科の岩島覚・統括診療部長は「香川県をモデルに、静岡県でも体制をさらに強化していきたい」と話す。

 秋田県では、県医師会が香川県での取り組みを参考に、県内全域で早期発見に向けた仕組みづくりを進めるよう県に求めている。九州の一部自治体でも同様の動きがある。

 日本動脈硬化学会のFH委員会で委員長を務める斯波真理子・大阪医科薬科大特務教授は「子どもの頃に早期に発見できれば、心筋梗塞になる人を確実に減らせる。有効な治療薬も出てきており、香川県のような取り組みを全国に広げてほしい」と話している。

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