藤原るか「ヘルパーは見た! 在宅介護ペット事件簿」
医療・健康・介護のコラム
三毛猫がナイスアシスト 引きこもりのおばあちゃんがヘルパーに心を開いたワケ
ホームへルパーによる高齢者支援は、本人らしい暮らしを安定させることが柱です。ドイツやスウェーデンなどでは、この「暮らし」の中にペットも含まれるという考えで制度が作られています。かたや私たちが住む日本では、「暮らし」の範囲をとても狭くとらえていて、介護保険ではペットの世話が認められていません。実際には、高齢者の暮らしとペットは切り離せない関係で、ペットのおかげで本人の生活が成り立っている場合も少なくないのですが。
貞子さんとミーちゃんのお宅への訪問は、そんな思いを新たにする機会となりました。
夫の死後、うつ状態に
当時80歳の貞子さんは、1年ほど前に夫を病気で亡くし、重いうつ症状で自宅から一歩も出られなくなりました。高齢の親戚に食事を運んでもらって命をつないでいましたが、その人が体調を崩し、私たちの訪問介護事業所「グレースケア」にSOSが入ったのです。
訪問初日、玄関ドアを開けるなり、「帰ってくれ」という貞子さんの後ろからひょっこり顔を出した三毛猫。猫ながらご主人の窮状を理解していたのでしょうか、助けを求めるかのように細い声で「ニャー」と鳴きました。
貞子さんは「この子は人嫌いなのに」と驚いた様子。こちらはすかさず「うちにも猫ちゃんがいるから、においがするのかもしれませんね~」と猫に話題を移します。猫の名前を尋ねると、「ミーちゃん」という返答とともに、ずっとうつむいていた貞子さんの顔が上がり、やっと私の顔を見てくれました。
「ミーちゃん、おなかすいているみたい」なんて、猫の話題を手がかりに、部屋に上り込むことができました。
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