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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

[乳幼児突然死症候群(SIDS)]元気だった乳児の呼吸が睡眠中に突然、止まる…乳児死因の3位

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保育所では「睡眠中は5分に1回チェック」

今も乳児の死因の3位は乳幼児突然死症候群(SIDS)…うつぶせ寝は避けて

 幼稚園や保育所などでは毎年、睡眠中の突然死が発生しているものの、件数は減っています()。SIDSという診断名がついたのは、20年の1例だけでした。

 わが国の幼稚園や保育所などでは、睡眠中の乳児に対して5分おきの体位と呼吸状態のチェックが推奨されているため、減少しているのだと考えられます。

 22年に、全国の幼稚園、保育所などを対象に、日本経済研究所による アンケート調査 が行われました。お昼寝の時間を設けている施設のうち、99・4%が睡眠中の呼吸等の点検を実施していました。乳児では、5分に1回のチェックが72%、5分未満に1回が10%、10分に1回が10%でした。1歳、2歳と年齢が上がるにしたがって、チェックの間隔は長くなっていきます。

 このデータから、ほとんどの施設で睡眠中の呼吸チェックが行われていることがわかります。保育の場で、5分おきにチェックするのはたいへんな作業だと思います。

有効な対策は「あおむけで寝かせる」

 睡眠中の乳児の突然死は、保育管理下だけでなく、一般家庭でも問題となります。保育の場と違って、家庭では、乳児が寝ている時、5分おきに体位や呼吸の確認をすることはできません。現時点で、睡眠中の乳児の突然死のリスクを下げる最も有効な対策は「あおむけで寝かせること」です。

 睡眠中の乳児の突然死は、日本だけではなく、世界中で問題となっています。アメリカ小児科学会から、乳児の睡眠関連死を予防するためのガイドライン的な文書が発表されています。その中では、乳児用ベッドで、あおむけで1人で寝かせること、毛布、枕、ぬいぐるみなどの柔らかいものを乳児の周りに置かないこと、「添い寝」は避けた方がよいことなどが指摘されています。

 わが国では、親が子に添い寝をする習慣があるなど、生活環境が異なっている部分もあるので、独自の「乳児のための安全な睡眠環境ガイドライン」を策定する必要があると私は考えています。

 ガイドラインを作成するためには、わが国の乳児の睡眠環境の実態調査を行う必要があります。睡眠中の乳児の突然死例が発生したら、専門家が現場で検証を行う体制を整備し、死亡例については、遺伝子検査も含めて死後の検査項目を統一化し、検体の一部はバイオバンクに保存しておくなどの取り組みを行っていく必要があります。

 SIDSで子どもを亡くした遺族への支援も必要です。わが国では、30年前から、遺族を支援する「SIDS家族の会」が活動し、悲嘆からの立ち直りをサポートするグリーフケアが行われています。

自治体の検証のための手引き

 保育管理下で死亡事故が発生すると、その自治体で検証することが義務付けられています。睡眠中の乳幼児の突然死は、死亡原因や死亡に至る経過が不明なケースが多く、検証が困難で、検証報告書の内容にも不明な点が多くみられました。そこで、これまでに自治体から提出された検証報告書の分析が行われ、今後、適切な検証をするための「 検証報告書作成の手引き 」が作成されました。今後、各自治体が検証を行う場合、この手引を参考にするとよいと思います。(山中龍宏 緑園こどもクリニック)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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