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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

[乳幼児突然死症候群(SIDS)]元気だった乳児の呼吸が睡眠中に突然、止まる…乳児死因の3位

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 保育管理下で重大事故が発生するのは、「食う」「寝る」「水遊び」の時です。今回は、睡眠中の突然死である乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)についてお話ししましょう。SIDSは、病気であって、事故ではないと考えられていますが、窒息と区別がつきにくく、いったん発生すると保育現場は大混乱となります。保育の場だけでなく、一般家庭でも発生しますので、よく知っておくべきだと思います。

イラスト:高橋まや

20年間で発生数は4分の1

 SIDSは以前ほど注目されていませんが、2021年でも、乳児(0歳児)の死因の第3位を占めます。重大な問題です。(1位は先天奇形、変形及び染色体異常。2位は周産期に特異的な呼吸障害等)。

 SIDSとは、今まで元気だった乳児が、主に睡眠中に何の前ぶれもなく突然、呼吸が止まって死亡してしまう病気です。

 原因ははっきりしていませんが、自律神経の未熟性に伴う無呼吸からの回復が遅れるために起こると考えられています。症例の80%が、生後4~6か月のあいだに発生しています。保育管理下でも発生し、入園直後の不慣れな環境で発生することが多いとされています。

 調査の結果、「うつぶせ寝」「家族の喫煙」「人工乳(粉ミルク)」「着せすぎ」がSIDSの危険因子であることがわかり、乳児では「うつぶせ寝」を避けるキャンペーンが行われました。その結果、SIDSで亡くなった乳幼児は2001年に328人だったのが、21年には81人と4分の1まで減少しました。しかし、完全に防ぐことはできていません。

原因がわからないのがSIDS

 SIDSとは、「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」と定義されます。窒息死は含まれません。しかし、現実には、SIDSとされた中に窒息の症例が含まれている可能性があります。

 死亡診断書の傷病名は、死亡に立ち会った医師が判断したものです。SIDSと診断するためには解剖の所見が必須となったため、SIDSと診断される事例は少なくなって、「不詳の死」と診断される事例が増加しています。

 最近では、SIDS、窒息、不詳の死などを合わせて「予期せぬ乳幼児の突然死」(SUDI:Sudden Unexpected Death in Infancy)として考えられるようになりました。SUDIの中には、先天代謝異常症や致死性の不整脈などの疾患があることもわかってきました。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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