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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ「5類」 認知症の人が感染したら隔離できる?…対策の簡素化 特養ではもろ刃の剣

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コロナ5類移行後の「第9波」到来 患者隔離の負担減、補助金大幅減…特養施設長の実態報告

N95マスクを着けてホームの飼い犬におやつを与える若山施設長(「さくらの里山科」で)

 新型コロナウイルスの感染は、今もじわじわと広がっているように感じています。

 ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」では、この8月、2人の入居者がコロナに感染しました。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられてからでは初めてのことです。

 コロナ感染者への対応方法は、5類に移行したことで、楽になったことと難しくなったことの両方があります。

 楽になった点の代表は、感染者を厳重に隔離する必要がなくなったことです。

 当ホームでも、コロナ禍の3年間で、クラスター(感染集団)の発生を3回経験しました。その時は、入居者の居室を変更し、感染した入居者が療養するエリアと、感染していない入居者が生活するエリアとを完全に分けました。この完全隔離は行政から求められたわけではありませんでしたが、社会福祉施設に特例措置を認める行政の通達などもあり、私たちとしても入居者の命を守ることが至上命題でしたから、ためらわず踏み切りました。

 さらに、感染エリアに入れるのは、介護職員と看護師から成る感染対策チームのみとしました。慢性的な人手不足を抱える介護施設にとって、感染対策チームを作るのはとてつもなく大変なことでした。感染対策チームの職員にも、感染していない入居者のケアに当たる一般チームの職員にも、過重労働を強いてしまいました。ホーム全体で勤務を調整して感染対策チームに応援職員を送ったりしたのですが、それでも足りませんでした。

 コロナが5類になり、完全隔離をする必要がないように変わりました。入居者がコロナ感染した際の対応方法は簡素化され、職員の態勢上はとても楽になりました。ところが、完全に隔離できないということは、もろ刃の剣にもなります。

 今回感染した2人の入居者は、ともにほぼ寝たきりの状態の方で、最初から部屋の中に隔離されていたようなものでした。以前のように、感染した入居者と感染していない入居者の生活空間を分離する完全隔離ではありませんが、感染した方が部屋から出ず、感染していない人と接しないという点では、事実上、厳重な隔離となりました。そのため、2人以外に感染が拡大することはありませんでした。

 しかし、もし、認知症を患っていて、いろいろなことが理解できず、部屋の中にいるよういくらお願いしても外に出てしまう方が感染した場合でも、以前のようには部屋に隔離することはできません。感染している方が、室外を動き回り、他の入居者と接するのを止める手立てがないのです。その結果、ユニット(区画)の入居者全員が感染してしまう恐れがあります。実際、ユニットやフロアの入居者の大部分が感染してしまったという特養からの報告が、全国からぽつぽつと上がっているそうです。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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