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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

副作用があまりないのですが、抗がん剤は効いているのでしょうか?

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副作用があまりないのですが、抗がん剤は効いているのでしょうか?

イラスト:さかいゆは

 治療を行うとき、担当医が目指しているのは、「軽い副作用で高い効果」です。

 抗がん剤治療には副作用がつきものですが、副作用をできるだけ軽く抑えながら、できるだけ高い効果を得るのが理想です。

 副作用対策がうまくいって、つらい思いをすることなく治療を続けられて、効果も持続しているのであれば、「いい治療を受けられてよかったですね」と説明するところですが、患者さんの中には、「副作用がないのはむしろ心配」と思ってしまう方が少なくないようです。

副作用がつらい方が効果がある?

 「副作用があまりないのですが、効果が得られているのか心配です」

 「副作用が軽くなってきたのですが、抗がん剤が効かなくなってきたということですか?」

 「もっと強い治療に切り替えた方がよいのではないですか?」

 「どんな副作用にも耐えますので、強い治療をやってください」

 そんな訴えが聞かれます。

 私からの説明は、こうです。

 副作用と効果は別物です。副作用は軽ければ軽い方がよいのです。つらい副作用を感じていないのだとしたら、それは素直に喜んで大丈夫ですよ。

 苦労しなければ見返りが得られないと考える必要はなく、「軽い副作用で高い効果」が、理想の状態です。

 効果がどれくらい得られているかは、副作用とは別のものとして、きちんと評価する必要があります。

 大事なのは、効果と副作用のバランスです。今の治療で効果が得られているのであれば、とてもよい治療を受けているということになりますので、強い治療に切り替えたりしない方がよいです。

 これから新たな副作用が出てくる可能性もありますので、引き続き、効果と副作用のバランスが最善になるように工夫しながら、治療に取り組んでいきましょう。

抗がん剤治療のプラスとマイナスを考えて

 病気を抱えていると、どうしても、「マイナス」を前提に考えてしまいがちです。

 「病気なのだから、つらくて当然」

 「治療というのはしんどいもの」

 「苦しみに耐えなければ見返りはない」

 でも、病気のある状態を「マイナス」と決めつけてしまうのではなく、少し考え方を変えて、「プラス」を目指してみてもよいのだと思います。

 「病気があっても、今まで通り、自分らしく」

 「治療はよりよい状態になるために受けるもの」

 「マイナスがあっても、それを上回るプラスを目指す」

 抗がん剤治療は、つらい副作用(マイナス)を伴うことも多いのですが、それを上回る効果(プラス)を期待して行うものです。

 マイナスが小さいのであれば、少しのプラスでも治療の意義があります。マイナスが大きくても、それを上回るさらに大きいプラスが得られるなら、その治療を行う意義があります。「プラス」や「マイナス」は、客観的に数字で表せるようなものではなく、患者さんの価値観や治療目標によって、その重みは違ってきますので、患者さん自身が、マイナスよりもプラスが大きいと感じられるかが重要なポイントです。

 「副作用があるなら治療は受けない」とか「効く可能性があるならどんなにきつい治療でも受ける」とか、副作用だけ、効果だけで、治療の是非を判断するのではなく、患者さん一人ひとりが、「プラスとマイナスのバランス」を考える必要があります。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)や、「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)がある。

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