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認知症の人 自分で買い物を楽しめるようにする取り組み広がる…アプリやカードを活用したサービスも
認知症で苦手なことがあっても、買い物をする楽しみを持ち続けたい――。スマートフォンのアプリの活用や、周囲の適切なサポート、小売店の対応を見直すことなどによって、少しずつ、そんな思いが実現しつつあるようです。(田中文香)
[何買う?]アプリに「メモ」店でお知らせ
「買うものを確認しようにゃー」。静岡県に住む三浦繁雄さん(66)がスーパーに到着すると、スマホの画面に猫のキャラクターとメッセージが表示された。
三浦さんは、出かける前に登録しておいた「買うものメモ」を確認しながら、レトルトご飯やインスタントのみそ汁、ゼリー飲料をかごに入れていった。
「メモがないとほしいものがわからなくなったり、家にたくさんある物を買ってしまったりすることがある。無駄な買い物も防げて助かる」。8年前にレビー小体型認知症と診断された三浦さんは話す。
いつものようにセルフレジに現金を入れ、自分のペースで会計を済ませると、「できることは自分ですることで、緊張感を持って生活できる」と笑顔を見せた。
三浦さんは、約2年前にサービスが始まった買い物支援アプリ「KAERU」を利用している。
スマホの位置情報と連動し、目的地のスーパーに近づくと、買おうと思って事前に登録した商品のメモが自動で通知される。実際に買った物の写真をスマホで撮影し、記録しておくことで、何を買ったのかを後で確認できる機能もある。現在は無料で利用可能だ。
メモを通知する機能は、アプリ運営会社の創業メンバー、福田勝彦さん(40)が当事者の買い物に同行し、「紙のメモだと、店に着いた時には書いたことを忘れて、何も買わずに帰ることがある」という声を聞いたことから生まれた。開発にあたっては、認知症の人や家族、専門職ら約150人に話を聞いたという。
このアプリと連動して、お金の管理をサポートするカードも発行している。
チャージした金額の範囲内で買い物ができるプリペイドカードで、スーパーやコンビニなど、クレジットカード(マスターカード)で支払える場所で使える。
1日に使える金額を「3000円」などと設定することで、使いすぎを防止できる。使った分は、翌日に自動でチャージされる。
家族がアプリを使って代理でチャージすることや、いつ、どこで、いくら利用したかを把握して見守ることが可能。カードをなくした場合、遠隔操作で利用を止める機能もある。カードでの支払いに慣れる必要はあるが、金銭管理の不安を解消できる。
都内の女性(54)は、このカードを使い、岡山県で一人暮らしをする認知症の母親(90)を支える。以前は連絡を受けるたび、少額ずつ現金書留で郵送していた。
ヘルパーが同行して買い物をしているといい、「自分で食べたいものを選んで買うことは、母の生きる力になっている」と話す。
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