文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

元「歌のお兄さん」杉田あきひろさん、覚醒剤で逮捕からの再起…がんも依存症も乗り越え、歌い続ける

インタビューズ

[杉田あきひろさん](上)元「歌のお兄さん」覚醒剤で逮捕からの再起…救ってくれた長野県松川村のコンサート

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 NHK「おかあさんといっしょ」で1999年から4年間、「歌のお兄さん」を務めた杉田あきひろさん。2016年に、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けました。薬物依存からの回復、再起へともがく日々を救ってくれたのは、長野県松川村で開かれたコンサートでした。(聞き手・斎藤雄介 撮影・中山博敬)

「自分は薬物とは無縁だと思っていた」

[杉田あきひろさん]上 元「歌のお兄さん」、覚醒剤で逮捕からの再起…長野ダルクでの経験がぼくを変えた

――なぜ覚醒剤に手を出してしまったのですか。

 ぼくは福井県の小さな港町で生まれ育ちました。父は人格者で市の教育委員長、母は元教師というお堅い家庭環境で育ったんですね。

 大家族でみんな仲良くて、ぼくも社交的で友達も多く、勉強もそこそこできた音楽好きの普通の少年でした。

 今振り返ると「薬物」なんて自分とは無縁の世界のものだと思っていました。家庭環境に問題がある人や心に傷を持つ人、怖い人が使うものだと。後に自分が薬物と出会うなんて思いもよりませんでした。

 上京して慶応大学に進学し、在学中にミュージカル「レ・ミゼラブル」のオーディションに合格し、ラッキーにも1989年に初舞台を踏みました。レッスンに明け暮れて、日本初演の「ミス・サイゴン」のオーディションにも合格するなど、ミュージカル俳優時代は充実した日々でした。

 93年だったと思うんですけど、友人に「合法的なものだから」と言われて、「エス」というはやりの興奮剤を勧められたのです。当時はまだネットも一般的ではないし、情報量は少ない。「依存性もないから」という言葉をうのみにして、軽い好奇心で「エス」をやってみたら、音楽がキラキラ輝いて聴こえて、全く知らない感覚の世界に誘われました。それが、ぼくの初めての薬物体験でした。

 そうしたら、その何か月か後に、その友人が警察に捕まって、そのとき初めて「エス」が覚醒剤だと知りました。驚いて怖くなり、その後は「エス」とは離れてミュージカルに没頭する元の生活に戻りました。

 98年にNHK「おかあさんといっしょ」のオーディションに合格し、99年から4年間、「歌のお兄さん」として毎日番組に出演しました。ほぼ休みもなく忙しくて大変でしたが、充実していて楽しくて、初めて「うたうこと」に大きな責任を感じて仕事に取り組んでいました。最高のチームで最高の番組を作る。その頃には薬物のことは全く頭になく、「自分はもう薬物とは関係のない人間だ」「卒業できたんだ」と考えていました。

 2003年に番組を卒業後は、様々なコンサートや主演ミュージカルなど大きな仕事をたくさんいただけて、「歌のお兄さん」以上に忙しくて、それでも無我夢中に走り続けていました。

「依存症は言い訳の病気」

――ずっと頑張ってきたんですね。

 05年の年末に、頑張った自分へのごほうびでバリ島に旅行に行ったんです。そこで地元の密売人に声をかけられました。「おにいさん、おにいさん。あるよ、あるよ、エスあるよ」と。

 「エス」っていう言葉に突然、反応してしまって。一瞬にしてあの時の感覚を体が思い出してしまった。脳からよだれが出るような感じ。もう鳥肌が立って汗が噴き出て、思わず買ってしまったんです。

 でもそこで、頭の中で言い訳がはじまるんです。「ここは日本じゃない。バリ島だし」「日本ではやらないし」「ぼく、こんなに頑張ってきたんだし」「日本で出会えなかったクスリに、ここで出会えたんだし」。依存症って言い訳の病気なんです。

 「日本ではやるわけがない」と、本当にそう思っていたのに、東京に帰ってきた時にもあの感覚が残っている。薬物使用が確実に再発してしまいました。

 もちろん違法だし、いけないことだとはわかっていました。でも、ここで依存症の人間特有の言い訳が始まるんです。

 覚醒剤は物事に集中できる薬物なので、ふだん以上に仕事ができちゃうんですね。いい声も出る。いい発想も生まれる……。少なくとも、そう感じていたぼくは「いい歌をうたうためにはクスリが必要なんだ」とか、「いい仕事をするために今、必要なんだ」とか、自分を正当化していました。

1 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

interviews

インタビューズ
 

インタビューズの一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

元「歌のお兄さん」杉田あきひろさん、覚醒剤で逮捕からの再起…がんも依存症も乗り越え、歌い続ける

最新記事