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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

乳幼児にリンゴを食べさせて起きた死亡事故…相次ぐのはなぜか

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 食べ物による乳幼児の窒息は、保育管理下で毎年、起こっています。どのような食べ物が危険なのか、なぜ窒息が起きるのかについてお話ししましょう。

リンゴが気管につまって死亡事故…離乳期は加熱して軟らかくしてから

イラスト:高橋まや

「誤飲」と「誤嚥」は違う

 ふだんあまり使用しない言葉の違いをよく知っておきましょう。誤飲とは、本来、口にしてはならないものを口に入れ、それを飲み込み、その異物が食道を通って胃に入ることをいいます。

  誤嚥(ごえん) とは、口に入ったものが気道に入ることをいいます。誤嚥したものが気道を完全に塞いでしまった状態を窒息といい、気道の中にものが入った状態を気道異物、あるいは気管支異物といいます。「誤飲して窒息した」とは言いません。「誤嚥して窒息した」と言います。

 のどの奥は食べ物と空気の両方が通る交差点となっており、のどを通った食べ物は食道に、空気は気管に入ります。食べ物を飲み込む時は、突起状の 喉頭蓋(こうとうがい) が気管の入り口をふさいで食べ物が気管に入らないようにしています。

事例1: 6か月女児。2023年4月18日午後3時20分ごろ、鹿児島県 姶良(あいら) 市の認可保育所で、保育士がすりおろしたリンゴを与えた後、あおむけに寝かせたところ様子が急変。病院に搬送されたが意識不明の状態が続き、5月28日に死亡した。南日本新聞によると、おやつに出したリンゴをすったおろし器は、直径10~12センチの円形で、直径7、8ミリの穴が30個ほど開いていた。

事例2: 8か月男児。2023年5月16日午前10時半ごろ、愛媛県新居浜市の認可保育所で、保育士が離乳食を食べさせていたところ、長さ7ミリ、厚さ3ミリほどに刻んだリンゴ2切れを口にした直後、急に泣き始め、その後、顔色が悪くなった。背中をたたき、吐き出させようと試みたが改善せず救急車を要請。心肺停止状態となり、意識不明となった。

事例3: 1歳2か月男児。2020年2月12日午前11時30分ごろ、大阪市城東区の認可保育所の給食中に、男児がリンゴを食べるのを嫌がったため、保育士が何とか食べさせようとリンゴとハンバーグを一緒に口に入れたところ、男児が泣き始め、体をのけぞらせた。その直後にせき込み、食物片を詰まらせた。こどもの背中をたたいた時、リンゴ片とパンが出てきた。午前11時38分に救急車を要請し、43分に救急車が到着、12時に病院に到着し、13時14分に死亡が確認された。

なぜ、窒息事故が起こるのか

 食べた物が気管に入るリスクは誰にでもありますが、乳幼児では 嚥下(えんげ) 機能が未熟なため窒息するリスクは高くなります。

 口に入った食べ物は、前歯でかみきり、奥歯ですりつぶし、唾液と混ぜてドロドロの状態にしたものを飲み込んでいます。離乳期の乳幼児では、食べたものをすりつぶす臼歯が生えておらず、かむ力が弱く、誤って気管に入ってしまった食べ物を (せき) で押し出す反射も弱いのです。

 よくかまずに大きいまま食物を飲み込むと、のどの奥に詰まって窒息します。気管の太さは、本人の小指の太さと同じとされており、乳児の気管は直径6~8ミリと細いのです。

 かみ砕くことができなかった小さな食物片が舌の上に残っている状態で、何らかの理由でこどもが泣き始め、大声で泣き切ったあと、大きく息を吸うと、舌の上に残っていた食物片が気管に吸い込まれてしまうのです。食物片が大きければ窒息となり、短時間で死亡します。小さな食物片であれば、気管の一部を 閉塞(へいそく) し、その時間が長引くと低酸素性脳症となります。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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