文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

医療・健康・介護のコラム

「不妊治療をやめたら妊娠」はなぜ? ストレスを減らすより大切なこと

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

不妊治療をやめてハワイ旅行へ

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

 2年ほどたったある日、精神的に追い詰められたSさんは病院に通えなくなりました。夫はSさんに「これまで2人で暮らしていて幸せだった。私たちなら幸せに生きていけるだろうから、もう治療はきっぱりやめて、2人で生きる道を選ぼう」と伝えました。「私たちより長く治療を頑張っている人もいることは知っていましたが、私にはもう限界でした」とSさんは振り返ります。

 治療をやめることを決断したSさんは、「これまで頑張ったご褒美にぱあっと海外旅行でも行こう」と夫婦でハワイ旅行に出かけました。「気持ちを切り替えて、とにかく旅行を楽しみました」とSさん。日本に戻ってからは、不妊治療は一切やめて、日常生活に戻りました。

 すると半年後、なんとSさんは自然妊娠をしたのです! 「自分たちでも、何がなんだかよくわかりません。あんなに頑張っても全く妊娠できなかったのに。奇跡としか考えようがなくて」と驚きながらもうれしさでいっぱいだったと言います。その後、Sさんは無事出産し、今は夫婦2人で子育てを楽しみながら頑張っています。

ストレスを減らそうとするのではなく…

 不妊治療には精神的なストレスやプレッシャーがよくないといわれています。治療をやめて妊娠できたという人がいるのは、「妊娠しなければならない」という圧力から解放されたせいかもしれませんが、医学的な根拠は全くありません。

 Sさんについてもあくまでご本人の体験談ですし、こうした奇跡的なストーリーは伝説的に語られるケースが多く、実際にはごくわずかです。しかし、当事者は「どうやったらストレスを減らせるのか?」と考えてしまい、そのこと自体が重荷になることも少なくありません。

 私はよく、「ストレスを減らそうとするのではなく、何かを楽しむ時間を作るようにしてください」とアドバイスしています。不妊治療に取り組んでいると、そのことばかり考えてしまうからです。

 このコラムを読んでくださっている皆様が少しでも楽しい時間を自分のために見つけて、すてきな人生を送ってほしいと願っています。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=ファウンダー・理事)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

meet-baby_title2-200-200

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへの一覧を見る

最新記事