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赤平大「発達障害と高IQのリアルな子育て」

医療・健康・介護のコラム

発達障害をいつ、どのように息子に告知するべきか? 悩んだ末の結論は

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発達障害をいつ、どのように息子に告知するべきか? 悩んだ末の結論は

 「赤平さんの息子さんはADHD(注意欠如・多動症)の診断がありますので、小学校では通級指導教室に通うことになります」

 区の女性職員は、たどたどしく、小さな声でそう言いました。若い彼女の手には「ADHD」「通級」と書かれた就学時健診の1枚の書類。それを私に手渡すとき、女性職員の手は震えていました。

 今回、みなさんにお伝えしたいのは「二つの発達障害告知」についてです。

① 保護者への告知
② 子ども本人への告知

 特に二つ目に関して「いつ」「どのように」告知すれば良いのか? そもそも告知すべきなのか? 先に申し上げると、私はこの問いの正解を持っていません。そんな私の当時の結論は「できるだけ早く、息子に告知する」でした。

 息子に告知することでマイナス面があるのではないか? 息子の人生で賭けはしたくない。でも告知の決断の先延ばしも、またリスクになる。非常に悩みました。

 私がどのような根拠からこの決断をしたのかをお伝えすることで、皆さんの検討材料にしていただければと思います。

保護者への告知…落胆と適応を繰り返し受容

 息子は保育園の年長のときに発達障害の検査を受けました。明確な診断結果は出ませんでしたが、しばらくして区が管理する発達障害の療育施設に通うことになりました。ここでは2週間に1度、同世代の子どもたちと一緒に過ごしながら、ゲームや簡単な学習をすることで、運動療育や集団生活への適応などを学びます。通っていた施設では、保護者はマジックミラー越しに子どもの様子を見守ることができました。

 まだ発達障害を学ぶ前だった私は、この施設での活動を見て「やっていることは保育園と同じ」「何の意味があるんだろう?」と療育を理解できていませんでした。

 その後、小学校進学にあたり、就学時健診があり、冒頭の出来事で明確に「発達障害、ADHD」「通級」の告知となりました。

 なぜ区の女性職員は「震えながら」私に書類を渡したのか? それを理解するには、発達障害の告知を保護者がどのように受け止めるかに関する「障害受容」という言葉が手助けになります。障害受容の研究ではいくつかの仮説がありますが、今回は「障害受容の 螺旋らせん 形モデル」をご紹介します。

 この図は、発達障害の告知を受けた後の保護者の状態をモデル化したものです。告知後はまず「落胆」状態となり、その後「適応」に、そして「落胆」と繰り返しています。生活していて「他の子どもと変わらない」と感じながら、子どもの問題行動がきっかけで「やはり発達障害だから……」と落胆する。保護者の内面には、発達障害を肯定する気持ちと否定する気持ちが常に表裏一体となって存在しています。

 重要なポイントは、この螺旋がバネのように伸縮することです。つまり、障害の受容がスムーズだと螺旋は縮み、表面の「白い部分=適応」が増えます。一方で受容に時間がかかる、すなわち螺旋が引っ張られ伸びると、裏面の「黒い部分=落胆」が増加します。

告知に怒りだす保護者も

 私に障害告知をした区の女性職員からすれば、最初は必ず「落胆させる」わけですから、心理的なストレスはよく理解できます。さらに数人の専門家に取材したところ、障害告知を認めたがらない保護者が怒りだすケースもあるとのことです。区の女性職員が震えていたのは、そんな理由もあったのかもしれません。

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赤平 大(あかひら・まさる)

 元テレビ東京アナウンサー。現在はフリーアナとしてWOWOW「エキサイトマッチ」「ラグビーシックスネーションズ」、ジェイ・スポーツ「フィギュアスケート」など実況、ナレーターとしてNHK BS「ザ少年倶楽部プレミアム」など担当。

 2015年から千代田区立麹町中学校でアドバイザーとして学校改革をサポート。2022年から横浜創英中学・高等学校でサイエンスコース講師を担当。発達障害学習支援シニアサポーター、発達障害コミュニケーション指導者などの資格を持つ。早稲田大学ビジネススクール(MBA)2017年卒優秀修了生。

 発達障害と高IQの息子の子育てをきっかけに発達障害動画メディア「インクルボックス」運営。

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