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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

がん患者は、どんな運動をすればよいのでしょうか?

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がん患者は、どんな運動をすればよいのでしょうか?

イラスト:さかいゆは

 「がん患者も運動を」という話がよく聞こえてきます。

 ほどよい運動が、「体にいい」というのはよく言われる話で、がん患者さんも運動した方がよさそうです。

「抗がん剤治療中でも運動していいんですか?」

 がん患者さんからも、運動のことはよく聞かれます。

 「抗がん剤治療中でも運動していいんですか?」

 「やっぱり、運動しなきゃダメですか?」

 「普段運動しないんですけど、どんな運動をすればよいのでしょうか?」

 「運動していいんですか?」と聞かれた場合は、運動を避けるべき特別な事情でもない限り、「もちろんいいですよ!」と即答します。がんがあるから、あるいは、抗がん剤治療中だからという理由で、運動は控えなければいけない、ということはなく、体調が許すなら、好きな運動をして大丈夫です。「医者に聞くよりも、自分の体に聞くのでいいんですよ」なんて言うこともあります。

 「運動しなきゃダメですか?」と聞かれた場合は、

 「イヤイヤするものじゃないですからね。無理しなくてもよいと思いますよ。でも、ちょっとした運動を、自分のペースで、楽しくやってみるのもありかもしれませんね」

 このようにお答えします。

 患者さん本人の気持ちをくむことが重要で、「やりたいことはぜひどうぞ」「やりたくないことは無理せずに」というのが、私の基本的なスタンスです。

 「がんをよくするために○○しなければいけない」という患者さんの言葉を聞くことがありますが、「○○しなければ」と、追い立てられるように何かをするのは、あまり得策ではないように思っています。

 運動にしても、食事にしても、本来は楽しむものですので、それが義務や苦痛になってしまうのは本末転倒です。

 やっぱり、運動も、食事も、「楽しく」するのが原則です。

運動は、本当に「体にいい」のか

 楽しくできて、それが体にいいのであれば、言うことないですね。

 では、がん患者さんにとって、運動は、本当に「体にいい」のでしょうか。

 「体にいい」「健康にいい」「がんにいい」というのは、なんとなくイメージは伝わりますが、これらを客観的な指標で評価するのは、意外に難しいものです。

 考えられる指標としては、

  • 生活の質(QOL)
  • 治療効果
  • 生存期間

 などがあります。

 QOLは、身体的な症状や、気持ちなどについての質問に患者さん本人が答えた回答を数値化します。総合的なQOLを評価するほか、特定の項目や症状についての評価も可能です。

 これまで、がん患者さんや、がんを経験した「がんサバイバー」を対象とした研究は数多く行われていて、がんサバイバーに運動を勧めることで、QOLが改善する傾向は示されています。ただ、がんの再発率減少や生存期間の延長につながるかどうかは、まだはっきりしていません。

 がん研有明病院でも、乳がんサバイバーの方を対象とした臨床試験を準備中です。スマートフォンアプリも活用した3か月間の運動プログラムを実施するグループと、実施しないグループに分けて、症状や体力などの変化をみる「ランダム化比較試験」です。こういう研究を通じて、がん患者やがんサバイバーの皆さんにとって適切な運動のあり方を考えられたら、と思っています。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)や、「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)がある。

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