メディカルトリビューン
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アーモンドの長期摂取が糖代謝に悪影響
アーモンド摂取が糖代謝に及ぼす影響に関する研究結果は一貫していない。オランダ・Maastricht University Medical Center+のElske Gravesteijn氏らは、過体重/肥満および前糖尿病の男女を対象に、自由生活環境下での長期的なアーモンド摂取が糖代謝に及ぼす影響を検討するクロスオーバーランダム化比較試験(RCT)を実施。対照期間と比べ、アーモンド摂取期間でインスリン感受性が有意に低下し、食後血糖値と空腹時インスリン値が有意に上昇したこと、こうした悪影響は体重の増加のみでは説明できなかったことをEur J Nutr( 2023年5月31日オンライン版 )に報告した。
生アーモンド50g/日を5カ月間摂取
アーモンド摂取が前糖尿病者や2型糖尿病患者の糖代謝に有益な影響を及ぼすとする研究が数多く存在する一方で、有益性は認められなかったとする研究もある。結果の不一致については、高カロリーのアーモンド摂取による体重増加が関与している可能性が指摘されている。
Gravesteijn氏らは、40~75歳で過体重/肥満および前糖尿病の男女43例を、細やかな食事指導を行わない自由生活環境下でアーモンドの長期摂取が糖代謝に及ぼす影響を検討するクロスオーバーRCTに登録。対照期間とアーモンド摂取期間は各5カ月で、間に2カ月のウオッシュアウト期間を設けた。
アーモンド摂取期間中はホール(全粒)の生アーモンドを毎日50g摂取した。1日のうちいつ摂取してもよいが、全量を一度に摂取することとし、期間中は他のナッツ類の摂取を禁じた。対照期間中はアーモンドを含む一切のナッツ類の摂取を禁じた。
両期間の終了時に、高インスリン正常血糖クランプ法によりインスリン感受性を評価し、食後血糖値、空腹時インスリン値、48時間持続グルコース値(24時間で2分割して平均値を算出)などを測定した。
BMI調整後も糖代謝への悪影響が残存
34例(男性22例、女性12例)が試験を完遂した。年齢中央値は66歳(四分位範囲56~69歳)、BMI中央値は28.3(同26.8~33.7)だった。
対照期間と比べアーモンド摂取期間では、インスリン感受性が有意に低下し(P=0.002)、食後血糖値と空腹時インスリン値が有意に上昇した(順にP=0.019、P=0.003)。
一方、24時間持続グルコース値の曲線下面積(AUC)に、対照期間とアーモンド摂取期間で有意差は認められなかった(P=0.066)。
対照期間と比べ、アーモンド摂取期間にはエネルギー摂取量が有意に増加した(P=0.031)。このことから、今回の試験のように食事指導を行わない自由生活環境下では、アーモンドは他の食品と置換されるのでなく、通常の食事に追加する形で摂取される可能性が示唆された。
また、エネルギー摂取量の増加に伴い、BMIとウエスト周囲長も有意に増加した(順にP=0.002、P=0.013)。しかし、BMIの変化を調整した解析でも、アーモンドの糖代謝への悪影響は残存したため、体重増加のみでは完全に説明できなかった。
以上から、Gravesteijn氏らは「今回の検討では、過体重/肥満および前糖尿病の人において、アーモンドの長期摂取はインスリン感受性と糖代謝に悪影響を及ぼすことが示された」と結論。ただし、他の心血管代謝危険因子に対するアーモンドの有益性は一貫して示されていることについて、「ナッツ類のような高エネルギー食品を、いかに体重増加とそれに伴う臨床転帰の悪化を予防しつつ普段の食生活に取り入れるかに関して、なんらかの指針が必要かもしれない」と付言している。(小路浩史)
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