メディカルトリビューン
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糖尿病の生活習慣介入効果は長期持続 米・Why WAITの10年追跡研究
米・Joslin Diabetes CenterのShaheen Tomah氏らは、糖尿病患者を対象とする生活習慣への強化介入(Intensive Lifestyle Intervention;ILI)プログラムWeight Achievement and Intensive Treatment(Why WAIT)の長期追跡結果を BMJ Open Diabetes Res Care(2023;11:e003179) に発表。ILIプログラムにより長期間の体重減少維持が可能であること、1年後に7%以上の減量を維持できていた参加者ではHbA1cの有意な改善や糖尿病腎症の新規発症が低減できることが示されたと報告した。
1年後の体重減少率で7%未満/以上に分けて10年後を比較
Why WAITは減量および厳格な糖尿病管理を目的に、2005年9月からJoslin Diabetes Centerで実施されている12週間のILIプログラムである( Curr Diab Rep 2008;8:413-420 )。
12週間のプログラムを完遂した糖尿病患者129例(2型糖尿病120例、1型糖尿病9例)の体重を1年後に測定し、減少率で7%未満群(61例)と7%以上群(68例)に分け、10年間追跡調査した。
主要評価項目は10年後の体重とHbA1cの変化量。副次評価項目は、10年後の脂質プロファイルおよび血圧の変化、最小血管障害(腎症、網膜症、神経障害)などとした。
7%以上群でHbA1cの改善と体重減少が有意に大きい
プログラム参加時の平均年齢は、HbA1c 7%未満群が53.3歳、7%以上群が54.1歳、女性はそれぞれ44例(72.1%)、41例(61.2%)だった。
全体の12週時点における体重減少幅は平均10.8kg(-9.7%)で、10年後は7.7kg(-6.9%)の減量を維持していた。
各群の10年後の体重減少は、7%未満の群4.3kg(-4.3%)に対し、7%以上群では10.8kg(-9.3%)と有意に減少していた(P<0.001)。
HbA1cに関しては、7%未満群でベースラインの7.5%が12週時点で6.7%に低下。しかし、1年後に7.7%、10年後には8.0%とリバウンドしたのに対し、7%以上群ではベースラインの7.4%が12週時点で6.4%に低下し、1年後で6.8%、10年後で7.3%と有意差が認められた(P<0.05)。
ベースラインと比べた脂質プロファイルや血圧の変化については、両群とも10年後のLDL-CとHDL-Cは有意に改善した(P<0.001)。トリグリセライド(TG)は7%未満群で有意に上昇(P<0.01)し、7%以上群でも上昇傾向が見られたが、有意ではなかった。血圧は両群とも有意な上昇は見られなかった。
7%以上群では糖尿病腎症発症リスクも有意に低下
細小血管障害に関しては、腎症の新規発症が7%未満群で14例、7%以上群で6例〔100人・年当たり3.58 vs. 1.42例、7%以上群のハザード比(HR)0.4、95%CI 0.15~1.06、P=0.066〕に見られた。7%以上群の男性割合が7%未満群より高かったため、性による調整を行い、さらに年齢、糖尿病のタイプ、糖尿病罹病期間、BMIなどを調整したところ、調整HRは0.32(95%CI 0.11~0.9)と7%以上群で腎症発症リスクが68%有意に低下した(P=0.007)。
網膜症と神経障害に関しては両群で新規発症リスクに有意差は見られなかった。
ILIの有効性を示す実臨床データ
Tomah氏らは「糖尿病患者に対するILIプログラムの有効性については、Look AHEAD試験でLDL-Cを除く心血管疾患(CVD)危険因子の改善が報告されたが、体重減少とCVDイベント/死亡率との関連は示されなかった( N Engl J Med 2013;369:145-154 )」と指摘。
さらに「われわれは既にWhy WAITの5年追跡データを報告しているが( BMJ Open Diabetes Res Care 2017;5:e000259 )、今回の解析では実臨床においてILIプログラムによる体重減少が10年後も維持されることを示しただけでなく、1年後に7%以上の体重減少を維持した患者では、10年後の腎症発症リスクも低減することを示すことができた」と結んでいる。(木本 治)
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