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学校の自販機も改札も「顔パス」、生徒「刺激的でかっこいい」…急速に広がる顔認証

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 目や鼻、口などの特徴から個人を識別する「顔認証技術」の利用が急速に広がっている。キャッシュレス決済にスマホのロック解除、イベントや施設の入退場管理……。開発企業の担当者らは「あらゆることが“顔パス”で行えるようになる日も近い」と期待する。ただ、認証用の画像が目的外に使われ、プライバシーの侵害につながることへの懸念も根強く、信頼性向上が課題になっている。(浜田喜将)

学校の売店も顔認証で決済

 6月中旬の放課後、愛知県蒲郡市にある私立中高一貫校・海陽中等教育学校の売店をのぞくと、生徒たちが顔認証決済で次々とパンやジュースなどを買い求めていた。同校では「生徒たちに日常的に最先端の技術に触れてほしい」との考えから、2年ほど前に校内の自動販売機に顔認証決済システムを導入。昨年10月から売店のレジでも使用を始めた。

学校の自販機も改札も「顔パス」、生徒「刺激的でかっこいい」…急速に広がる顔認証

タブレット端末に顔を向けるだけで決済できる(画像は加工してあります)

 店員が商品のバーコードを読み取ると、生徒はタブレット端末に顔を向けるだけで、登録した画像とひもづいた保護者のキャッシュカードなどから代金が引き落とされる。全寮制の同校では、約500人の在校生全てが顔の画像を登録済みで、快適にキャッシュレス生活を送っているという。

 4年生(高校1年生に相当)の男子生徒(15)は「最先端の技術を使いこなしている感じが、刺激的でかっこいい。何よりも、手ぶらで買い物できるのは楽」と笑顔で話した。

登下校管理も「顔」で

 教育現場ならではの活用法も探られている。熊本県荒尾市では、子どもたちの登下校の管理に顔認証技術を生かそうと、昨年から市内三つの小学校で試験運用を行った。校舎の出入り口に認証用カメラを設置し、登下校時に児童が顔を映すと、担任のデータ管理端末に時刻などが表示される仕組みだ。保護者もスマートフォンなどからデータを見られ、子どもが学校に滞在中か、既に下校しているかを確認できる。

 同市スマートシティ推進室の担当者は「将来的には、学習用タブレット端末の位置情報も併用し、登下校中も含めた子どもたちの見守りを行うことも検討している」と言う。

 近年、顔認証の利用が急拡大している背景には、人工知能(AI)の進化で膨大なデータの蓄積や処理が可能になり、認証の精度、スピードともに格段に向上したことがある。海陽中等教育学校にシステムを提供するNECの今岡仁フェロー(53)は「現在の技術レベルでは、マスクを着けていても99・9%の精度で瞬時に個人を識別できる。活用の可能性は、日常生活のあらゆる場面に広がっている」と胸を張る。

改札も「顔」パス

 大阪市内のJRや地下鉄の駅では、顔認証技術を使った自動改札の実証実験も進められている。

 JR大阪駅には今年3月、JR西日本と大日本印刷が共同開発した「顔認証改札」がお目見えした。利用者はゲートを通過するだけで、事前登録した顔の画像と同一人物かどうかを見極め、改札業務を行う。現在は約1000人の利用客が登録し、大阪―新大阪駅間で試験運用中だ。JR西では2025年の大阪・関西万博に向けて、他駅への増設を目指すとしている。

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JR大阪駅には今年3月、「顔認証改札」が試験導入された

認知機能のチェックも…

 順天堂大学と日本IBMなどは顔認証技術を応用し、認知機能のチェックを行うアプリを開発した。利用者は、タブレット端末で「笑顔」と「真顔」の画像を撮影した上で、簡単な質問に回答。すると、AIが表情と音声を分析し、認知機能の状態を15段階で評価してくれる。三菱UFJ信託銀行は3月に、このアプリを窓口業務に試験的に導入した。行員が高齢者などの顧客に金融商品を勧めてよいか迷った際に、判断の参考にするという。

抵抗感「ある」65%

 顔認証の技術がさまざまな形で社会に浸透する一方で、プライバシーの侵害などの問題を誘発する恐れも指摘されている。

 顔認証の目的で収集された画像データなどは個人情報保護法の対象で、第三者に提供する場合は、本人の許可を得る必要がある。それでも、市場調査コンサルタント会社・クレスト(現LMIグループ)の調査では、カメラを使った顔認証への抵抗感について、回答者の計約65%が「少しある」「とてもある」と答えている。

 個人情報保護に詳しい板倉陽一郎弁護士(44)は「防犯カメラと同様、画像などの提供を拒否できない場合は、抵抗を感じる人が多いのは当然だ。公的サービスなどでさらに普及を進めるには、技術に対する信頼を高めるとともに、画像データの適正な使用を担保することが欠かせない」と話している。

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