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森永康平「患者と医師のコミュ力を育てる」

医療・健康・介護のコラム

「先生、パソコンばかり見ないで患者を見て」…言葉以外にも大事なことがある

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「この後も大勢診なければいけない」

「先生、パソコンばかり見ないで。患者を見て」…言葉以外にも大事なことがある

 待ち時間が長くてイライラした患者さん、症状の原因が何なのか不安に感じる患者さん、ついに退院することが決まって喜びにあふれる患者さん……。医療現場では、様々な背景をもった人たちが、生老病死に直面しています。

 そこで働く我々は、喜怒哀楽、あらゆる感情を読み解いていかなければなりません。一方で、一人一人に長い時間をかけて話を聞き、診察をするというのは現状の医療制度の中では難しく、緊急性を判断して診療方針を立てつつも、「この後、◯人も診ないといけない」といったふうに切羽詰まった状態にあることが多いのも事実です。

 そうするとつい、患者さんに身体(顔)を向けずにパソコンに入力しながら話をしたり、患者さんが病気と直接関係なさそうな話をし始めたら顔をそむけたり。

 たとえ、患者さんの顔は見ていても、検査結果や診療方針など、ほかの「話さなければならないこと」「考えなければならないこと」で頭がいっぱいで、患者さんのお話にも「上の空」となってしまうことは少なくありません。

 そういった両者に溝がある状況下では、「言葉にはできないけど察してほしい」「お医者さんのほうから聞いてほしい」といった患者さんの思いが伝わることは、期待しないほうがよいかもしれません。医師が顔を見てくれない場合、「もう一度◯◯について説明してください」「不安に感じていることがあって」と、はっきり言葉に出したほうがよいでしょう。

言葉以外のコミュニケーションの重要性

 コミュニケーションといえば、「どんな言葉を使うか」が重要だと思うかもしれません。実際にこの連載でもその点に触れてきました。でも実は、言葉以外にも大事なことがあります。それは、表情を始めとした物言わぬメッセージです。

 例えば表情は、言葉では表現しきれないような相手の気持ちや考えを教えてくれる可能性があります。相手の理解度や不安、痛み、希望や要望、疑念などを察知するヒントにすることができるのです。人の表情は生物の中では突出したバリエーションを持ち、かつ一瞬一瞬で次々と変化していく流動的な側面もあり、見れば見るほどにどこか神秘的ですらあります。

 相手の表情をしっかりと観察し、様々な状況を洞察することは、コミュニケーションの鍵となります。

 まず、感情や心理的な状態を理解することができます。患者さんが不安そうな表情を浮かべている場合、それは病気や治療等に対する心配や恐怖を示しているかもしれません。このような状況では、矢継ぎ早にしていた話を止め、「いったん落ち着きましょうか」と不安の感情をまず受け止めてあげるほうがよいこともあるでしょう。

 また、喜びや安心の表情が見られる場合には、患者さんが良い結果を受け取ったり、良いニュースを聞いたりしたことを意味するかもしれません。私たちは共感し、お祝いの気持ちを伝えることができます。もしその表情の源が自分たち医療従事者の頑張りに起因することを確信できれば、この上ないモチベーションアップにもつながることでしょう。

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森永 康平(もりなが・こうへい)

 2011年、筑波大学医学専門学群医学類卒。組合立諏訪中央病院を経て、16年、獨協医科大学総合診療科助教。22年からは、「MED AGREE CLINIC うつのみや」(宇都宮市)の院長を務める。「医学教育を観察と対話から」を合言葉に、アート作品を活用した教育事業「 ミルキク 」を起業。

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