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家の片付け 生前整理のポイントは? 不用品は4種類に分ける…「庭じまい」をする人も
巣立っていった子どもの部屋がいつしか物置になっていたり、庭木の手入れが行き届かず、うっそうとしていたりしませんか。今回のテーマは「家の片付け」です。すっきりとした住まいを手に入れるコツやサービスを紹介します。(石井千絵、阿部明霞)
寄付、資源回収…お金かけず
「不用品を処分したことで、必要な物やお気に入りの物だけに囲まれ、これからの人生をよりよく暮らせるようになった」
整然とした自宅の居間でそう話すのは、大阪府枚方市の中川智子さん(66)だ。
15年前に乳がんの摘出手術を受けたのを機に、何があってもいいように家の片付けを意識するようになった。片付けのノウハウを学べる講座を受け、実践した。
自宅は木造3階建てで、夫(66)と2人の子どもの4人暮らしだった。五つの部屋にあった押し入れは、衣類や使っていない食器類などであふれかえっていた。
まずは、様々な物を〈1〉いる〈2〉いらない〈3〉迷い〈4〉移動――の4種類に分けた。いるかどうかの判断に迷ったら、「迷い」の箱に入れてしまっておき、半年後に再び判断した。「さすがにもう使わないな」と納得できたら、処分した。
タンスの引き出しを開けてみると、似たような服がたくさんあり、ほとんど着ていないものもあった。着たい服だけを残し、ほかは地域の子ども会による資源回収に出した。売却益の一部が子ども会の活動資金になるため、捨てるより抵抗感が少なかった。
義母から譲り受けた着物は、義母の了解を得てリサイクルショップに持ち込んだ。高価な帯もあったが、買い取り額は10枚で3000円だった。結婚式の引き出物で未使用の食器類もリサイクルショップで売却した。結婚のお祝いで友人からもらった人形や、子どものぬいぐるみは近くの葬儀場で無料で供養してもらえた。
唯一、処分に費用がかかったのは、電子オルガンだ。子どもが就職で家を出てからは弾く機会が減っていた。粗大ごみとして自治体に処分費2800円を納め、回収してもらった。
家が片付いたことで、長年の夢だったリフォームを実現し、日当たりの良い2階に居間と台所を移した。窓から桜並木が眼前に広がるのが自慢だ。
本人の死後に家族らが行う「遺品整理」では、必要に迫られて短時間で片付ける場合、多くがごみとして処分されるため、多額のお金がかかるケースもある。一般社団法人「生前整理普及協会」(名古屋市)によると、業者に依頼すると、人件費や処分費などで計20万~80万円程度かかることもあるという。
中川さんは「計画的に片付けることで、寄付先や買い取り店を探すことができ、お金をかけずに済んだ。私の死後に家族に迷惑をかけなくてもいいと思うと、すごく安心です」と話す。
思い出の写真やノート 厳選
片付けを通じて、思い出の品など大切な物を明確にして残すこともできる。
写真は特に処分に悩むものの一つだ。中川さんは、大量のアルバムから、ベストショットだけを厳選してアルバムを作り直した。旅行の写真の隣に、そのとき食べた駅弁の包み紙を貼り付けるなど、手紙や関連する資料も挟み込んだ。
写真を整理している際、自身の笑顔の写真が少ないことに気づいた。苦手意識があり、レンズを向けられると表情がこわばっていた。子どもたちに笑顔の姿を残そうと、積極的に一緒に写るようになったという。
アルバムのほかに、相続に役立てるための家系図や、葬儀や墓についての希望などを記したノートなどを、みかん箱サイズの「思い出箱」一つにまとめた。「仮に将来、介護施設に入居することになっても、さっとこれだけ持ち出せばよいので便利です」と話す。
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