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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

子どもが車に置き去りにされ熱中症で死亡…悲劇を繰り返さないためにできる現実的な対策は?

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 日本では、熱中症による死亡は年間に1000人を超えています。政府は、2030年までに、この死者数を半減させることを目標に定めた対策計画を5月に閣議決定しました。

 熱中症予防は子どもの安全を守る上で大きなテーマです。前回は、学校での運動中の子どもたちの熱中症についてお話ししましたが、今回は車の中への置き去りによる熱中症について取り上げます。

車に置き去りにされ熱中症で死亡…悲劇をなくすために何をすべきか

イラスト:高橋まや

保育園の送迎で相次ぐ死亡事故

事例1: 2022年9月5日、静岡県牧之原市の認定こども園の通園バスの車内に3歳女児が約5時間置き去りにされ、熱中症で死亡した。通園バスは18人乗りのワンボックスカーで、運転手を含む2人の職員と6人の園児が乗っていた。

 この事故は大きく報道されましたが、その1年前にも同じ状況で死亡事故が起こっていました。

事例2: 2021年7月29日、福岡県中間市の私立保育園の送迎バスの車内に5歳男児が約9時間置き去りにされ、熱中症で死亡した。送迎バスには運転手と7人の園児が乗っていた。

 保育園だけではありません。一般家庭でも、自動車内に子どもが置き去りにされ熱中症で死亡する事故が起こっています。

事例3: 2020年6月17日、茨城県つくば市。父親は小学生の姉と2歳の女児を車に乗せ、長女を小学校に送ったあと、次女を保育所に送り届けることになっていたが、次女を乗せたまま自宅に戻った。午後3時過ぎ、長女を迎えに行った際、後部座席でぐったりしている次女を発見した。約7時間、車内に置き去りにされ熱中症で死亡した。その地域のその日の正午の最高気温は27.8℃であった。

 実は、これと全く同じ事故が、2022年11月12日に大阪府岸和田市で起こっています。父親が、車に乗せた子どもを保育所に預けるのを忘れ、置き去りにされた子どもが熱中症で死亡した事故です。「うっかり」があまりにも悲しい結果をまねいた事故です。

 親がパチンコ店に行っている間、子どもを車の中に置き去りにしている問題もたびたび報道されています。今年6月には愛知県で、パチンコ店の駐車場に止めた車の中に、生後2か月の赤ちゃんを約1時間、置き去りにしたとして、29歳の母親が保護責任者遺棄の疑いで逮捕されました。

15分で車内温度は危険域

 JAF(日本自動車連盟)がテストした炎天下での車内温度のデータをみると、気温が33℃のとき、エアコンを消すと、約45分後には、車のボディー表面は49℃、車内温度は59℃、ダッシュボードは74℃、ハンドルは71℃、チャイルドシートのバックルの金属部分は47℃と報告されています。

 車内に子どもを残した状況を想定し、熱中症の危険度を測定したJAFの実験データもあります。

 買い物などで車内に子どもを残した状況を想定して暑さ指数(WBGT)の測定が行われました。エアコンを停止する前の車内のWBGTは20℃前後でほぼ安全域でしたが、エアコンを停止した5分後には25℃と警戒域になり、10分後には29℃で厳重警戒域、15分後には31℃で危険域に達しました。ちょっとした買い物であっても10~15分くらいはすぐに経過してしまいます。

 子どもがおとなしく寝ているから起こさない方がいい、あるいは冷房が利いているから大丈夫だろうと思って車内に子どもを残すのでしょうが、目覚めた子どもが冷房のスイッチを切ってしまうこともあります。すなわち、子どもを車内に残しておくことはたいへん危険なのです。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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