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健康経営の裾野を広げよう! 東京でシンポ開催
健康経営に積極的な企業や健保組合などでつくる一般社団法人「健康と経営を考える会」(本部・東京、企業・健保合わせて23団体が加盟)の第9回シンポジウムが5月23日、東京都内で開かれた。オンラインでも同時配信され、会場と合わせて約500人が参加した。

健康経営の推進に向けて活発な議論が行われた「健康と経営を考える会」のパネルディスカッション(5月23日、東京都内で)
■ 就活でも注目される「健康経営優良法人」
今回は「健康経営の裾野を広げよう!」がテーマで、冒頭、アクサ生命の安渕聖司社長が基調講演し、社員の健康増進や、法人契約を持つ中小企業に対する健康経営の支援などについて、具体的な取り組みを紹介した。アクサ生命は、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる」として、経済産業省が認定する「健康経営優良法人」の大規模法人部門「ホワイト500」に7年連続で選ばれている。
2018年に社員を対象に健康習慣に関するアンケートを実施して課題を把握。「運動」「食事」「メンタルヘルス」「がん対策」の四つの分野でウェルビーイング(心身共に健康な状態)を実現する「アクサ・ウェルネス・プログラム」を策定し、実行している。管理職全員を健康推進マネジャーに任命し、これまでに、産業医がコンビニで買える「おすすめ健康メニュー」を提案したり、各部署でスマホを使ったウォーキングキャンペーンを行ったりするなどの施策を進めてきた。
一方、法人契約を持つ企業には「24時間電話健康相談」など、オンラインやアプリの健康増進メニューの無料提供といった支援を行っている。2023年の健康経営優良法人に認定された企業1万6688社のうち、約25%にあたる4098社がアクサ生命によるこうしたサポートを受けているという。
安渕社長は「中小企業の社長から『従業員の健康を重視することで、外部からの評価も高くなり、社員の採用面でも効果が表れている』との報告を聞く。こうした取り組みで、企業は投資家や学生、社会に選ばれていく必要がある」と、健康経営を導入するメリットを強調した。
第2部のプレゼンテーションでは、経済産業省の橋本泰輔ヘルスケア産業課長から、健康経営優良法人の認定を受けた企業の離職率が全国平均の半分程度にとどまっていることや、昨年秋に大手転職情報サイトで特集ページが新設されるなど、労働市場でも健康経営の取り組み具合を重視する傾向が強まっていることが報告された。また、中小企業を対象にした補助金の審査で、健康経営優良法人は加点の対象になるなど、企業の取り組みを後押しする政策が紹介された。
■ 女性特有の健康課題のケアで生産性向上を
続いて、都内でクリニック院長を務める産婦人科医・宋美玄(そんみひょん)さんが「成長戦略としての女性ヘルスケア」と題して講演した。女性には、月経前に生じるイライラや不安、頭痛や手足のむくみ、月経期間中の下腹部痛や頭痛、食欲不振や憂うつといった「月経随伴症状」に苦しむ人が多い一方、定期的に婦人科・産婦人科を受診している人は少ないという現状を報告。月経随伴症状に伴う労働損失が4911億円に上るという試算を紹介しながら、こうした女性特有の健康課題をケアしていくことが企業の生産性向上につながる、と力説した。
後半のパネルディスカッションでは、「健康経営優良法人で働いている人は、わが国の被雇用者の13%(770万人)にとどまっており、まだ大きな流れにはなっていない」とのデータ(2021年度)などから、経営者に健康経営に取り組んでもらうコツなどを議論。「社員の健康管理の延長ではなく、経営課題解決のための投資だということを経営者に伝えている」など具体的な事例が報告された。
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