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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

「がん対策推進基本計画」で、がん医療はよくなるんですか?

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「がん対策推進基本計画」で、がん医療はよくなるんですか?

イラスト:さかいゆは

第4期の「基本計画」が今年3月に閣議決定

 日本人の死因の1位であるがん。国は、この疾患に対し、特に力を入れて取り組んできました。

 2007年に、重要な法律が施行されました。「がん対策基本法」です。この法律では、「がん研究の推進」「がん医療の均てん化(全国どこでも良質な診療を受けられるようにすること)」「がん患者の意向を十分尊重した、がん医療提供体制の整備」が理念として掲げられ、これにあわせて、最初の「がん対策推進基本計画」が策定されました。

 以来、2012年に第2期、2018年に第3期、そして2023年3月には第4期となる「基本計画」が閣議決定され、日本のがん医療の方向性を示す指針となっています。

 ただ、この「基本計画」の存在を、がん患者さんやご家族、そして、一般国民がよく知っているかというと、そうとは言えないようです。なんとなくニュースでみたことがあるという方はいても、その内容にまで関心を持つ方は多くありません。

 自分とは遠い世界で、役人や偉い人たちが机上で話し合って決めたもので、自分が受けている医療に直接かかわるものではない、というイメージがあるのかもしれません。

「机上の空論ですよね」

 「ああいうのって、机上の空論ですよね。いいことが書いてあるんだと思いますが、あれで本当にがん医療がよくなるんですか?」

 と言われたこともあります。

 確かに、この基本計画には、ありがちな言葉でまとめられているような部分もありますが、一人ひとりの患者さんに関係する具体的なことも書かれていますし、一文一文に、患者さんや、医療従事者や、官僚など、多くの方の思いが詰め込まれています。これを空論ととるか、自分事と感じるかは、受け止め方次第なのかと思います。

 まずは、 第4期基本計画 の全63ページを、ざっとご覧になってみてください。

 概要を1枚の図にまとめたものもあります。

「がん対策推進基本計画」で、がん医療はよくなるんですか?

 「基本計画」をとりまとめるための議論を重ねてきたのは、「がん対策推進協議会」で、その委員には、医療従事者だけでなく、がん経験者や社会の様々な立場の方が名を連ねています。

 特に、がん経験者の立場で参加している委員は、全国のがん患者さんの切実な思いを代弁していて、議事録を読むだけでも、心が動かされます。

 第4期基本計画の全体目標は、「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」です。

 「誰一人取り残さない」というのは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念として掲げられたフレーズですが、これはがん対策にも当てはまるということで、第4期基本計画のキーワードとなりました。

 第4期基本計画では、「がん予防」「がん医療」「がんとの共生」という三つの柱について、今後取り組むべき具体的な施策がまとめられています。

HPVワクチンや緩和ケア盛り込む

 「がん予防」では、HPVワクチン(子宮 (けい) がんなどの原因となるウイルスの感染を防ぐワクチン)の接種勧奨や、科学的根拠に基づくがん検診の実施などについて言及されています。

 「がん医療」では、がんの手術療法・放射線療法・薬物療法の充実に加えて、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が明確に位置づけられています。

 「がんとの共生」では、「がんになっても安心して生活し、尊厳を持って生きることのできる地域共生社会を実現する」とし、がん相談支援センターの活用、がん患者やがんサバイバーの社会的な問題への対策(就労支援など)が重点的に記載されています。

 また、これらを支えるための基盤の整備として、こどもへのがん教育や、国民に対するがんに関する知識の普及啓発、患者・市民参画の推進、デジタル化の推進の重要性も強調されています。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)や、「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)がある。

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